スキルアップ
2016年9月16日
たったこれだけで、音が劇的に変わる! いい音を求める人に教えたい「スピーカー学」
文・ 中村和宏
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 毎日、全力で仕事をしたあとは、住み慣れたわが家に戻ってゆっくり過ごす、という方も多いでしょう。おいしい食事を楽しみ、飲める方はお酒を飲み、高ぶった気持ちをクールダウンする――それらも最高の時間の過ごし方のひとつと思います。

 そんなときに「お気に入りの音楽を聴きたい」というニーズは今も昔も変わらずあるようで、さまざまな方が「いいオーディオ装置はないだろうか?」と探しています。これまで筆者は、「音楽は小さい音でもいいからスピーカーで聴きたい! 最近流行のイヤフォンやヘッドフォンもいいんだけど、あれ、何となく疲れるんだよね」という何人もの方に出会ってきました。

 しかしながら、「オーディオ通」といわれる友人や知人に尋ねてみて「まずは部屋の改装かな」「電源からだね」などと手間の面でもお金の面でもハードルの高いことを言われて、せっかくの気分が削がれた人も少なくないようです。

趣味のオーディオで「甲子園」を目指す必要はない


 オーディオの世界で20年以上生きている筆者が思うに、オーディオ通の友人や知人の意見はある面では正しいのですが、皆が皆、そこを目指す必要はありません。

 「まず部屋」「まず電源」というのは「野球をするなら甲子園での優勝を目標にトレーニングすべきだ。そしてプロを目指せ!」といっているようなものです。

 とは言え、やはり「必要な最低限の知識」というものはあるわけで、オーディオについても同様です。

 ほとんどのオーディオ雑誌では「機器自体のよしあし」についてのみ語られていますが、本当にすばらしい機器であっても、部屋によってその音は随分変わります。特にスピーカーでは顕著です。なぜでしょうか?

 中学校の物理で習ったと思いますが、音は「物体の運動から生じる空気の振動」です。この空気の振動は四方八方に伝わります。聴き手の耳以外の場所にも当然届き、壁面まで到達します。壁面に到達した音は一部が壁面に吸収され、一部は反射され、さらにその一部が反射音として聴き手の耳に届きます。

 この機器の音と部屋の反射音が混ざった音を我々は必ず聴いていることになります。ですから、部屋の音響特性を無視した状態で機器だけのよしあしを論じるのは、バランスを欠くのです。

 「じゃあ、やっぱり部屋をつくり直すの?」という話になりそうですが、実は一般の家屋であればそこまでやらなくても、ほどほどの音響調整は可能なのです。

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本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践
失敗しない再生機器の選び方
中村和宏 著



中村和宏(なかむらかずひろ)
1967年、大阪府生まれ。5歳からピアノを習う。14歳のころからギターを独学で習得し、作曲も開始。自作曲を演奏するため、ベースも弾くようになる。慶應義塾大学経済学部入学後、バンド活動に勤しむ。ギター、キーボード、ボーカルを担当して、オリジナル・カバー問わずさまざまなバンドやセッションに参加。大学卒業後、サウンドデザイナーとして株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入社。効果音制作、音声収録、楽曲制作とゲームサウンド制作全般に従事。「エアーコンバット22」「タイムクライシス」など、おもにアーケードゲームのサウンド制作を手がける。開発機材の導入アドバイザー業務も並行して担当し、当時、まだポピュラーではなかった音響制作機材、Avid Technology「Pro Tools」の導入に関わる。2006年、バンダイナムコゲームス退社後、有限会社モナカに作・編曲家として参加。「テイルズ オブ イノセンス」(Nintendo DS)「同R」(PlayStation Vita)などのサウンドを担当。2010年、同社退社。現在はフリーランスの作・編曲家として活動中。民生機器の音響調整にも関わる。最新作は「タイムクライシス5」。