カルチャー
2016年9月28日
物づくり、工学的視点から見た「日本刀」のスゴさ
文・臺丸谷 政志
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昨年リリースされた、日本刀を擬人化したイケメンキャラを育てて敵と戦うオンラインゲーム『刀剣乱舞』以来、日本刀にハマる「刀剣女子」が増えています。2016年10月からは、『刀剣乱舞』のテレビアニメがスタートするなど、今後もますます日本刀に注目が集まりそうです。しかし日本刀に興味があるものの「必ずしもその内容はよく理解していない」「日本刀とは何かを知りたい」という方も多いのではないでしょうか? 『日本刀の科学』(サイエンス・アイ新書)の著者であり、衝撃工学、熱応力の専門家である室蘭工業大学名誉教授の臺丸谷政志さんに、物づくりや工学の視点から見た日本刀のスゴさを伺いました。


なぜ日本刀は身近な存在に感じられるのか


――日本刀について。
 日本刀といえば、何となく身近な存在として感じている方も多いように思われます。映画やテレビドラマの時代劇は、日本刀なしでは成立しないでしょう。確かに、映像としては身近です。しかし、1876年に廃刀令が公布されてからすでに140年ほど経ており、愛刀家や真剣を用いた居合道などを実践されている方々などを別にすれば、一般的には遠い存在になっています。

――でも、日本刀にまつわる言葉は数多くありますね。
 日本刀には1000年の歴史があり、日本文化に深く根付いています。ですから、私たちが特にそれをイメージせずとも、ごく自然に使う日本語の中に日本刀にまつわる言葉も多くあります。

 たとえば「真剣勝負」「一刀両断」「単刀直入」「切羽詰まる」「鐔迫(つばぜ)り合い」「鎬(しのぎ)を削る」「反りが合わない」「折り紙付き」「助太刀」「両刀使い」「伝家の宝刀」など、枚挙にいとまがないほどです。これも、我々が日本刀を身近な存在として感じている一因かもしれません。

――そもそも「日本刀」の定義は?
 「玉鋼(たまはがね)」および伝統的な「鍛冶・鍛錬法(かじ・たんれんほう)」によってつくられた刀剣類の総称が「日本刀」です。刀剣類には、太刀(たち)、刀(かたな)、脇差(わきざし)、短刀(たんとう)、剣(つるぎ・けん)、長巻(ながまき)、薙刀(なぎなた)、槍(やり)などがあり、太刀や刀の代名詞にもなっています。

図1●写真:臺丸谷政志撮影

 図1のAの日本刀は「刀(打刀ともいう)」で、刀装のことを拵(こしらえ)といいます。江戸前期に作刀された寛文「新刀」と呼ばれる約400年前の比較的新しい刀です。慶長以前に作刀されたものを「古刀」といいます。Bは鞘(さや)を抜いた姿で、Cは刀身、目釘を抜いて分解した状態です。

 刀匠(刀工)の仕事は刀身の製作で、刀刃の研ぎは研師(とぎし)、拵の刀装品などは、鞘師(さやし)、鐔師(つばし)、白銀師(しろがねし)、柄巻師(つかまきし)、塗師(ぬりし)などの専門職人の仕事になります。日本刀の鑑定や鑑賞は、普通、拵を外した刀身のみが対象になります。

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日本刀の科学
武器としての合理性と機能美に科学で迫る
臺丸谷 政志 著



臺丸谷 政志(だいまるや まさし)
1945年、北海道生まれ。室蘭工業大学名誉教授。1968年、室蘭工業大学工学部機械工学科卒。1970年、室蘭工業大学大学院工学研究科機械工学専攻修了。1980年、工学博士(北海道大学)。1987~2011年、室蘭工業大学工学部教授。著書は『基礎から学ぶ材料力学』(森北出版社、2004年)など。衝撃工学、熱応力および日本刀に関する研究論文が多数。室蘭工業大学と室蘭民報社が共催する公開講座「日本刀の科学」で講師を務める。