カルチャー
2016年11月14日
舛添氏、ショーンK氏、野々村元県議...。なぜ「自分を盛る人」が増えているのか?
文・和田秀樹(精神科医)
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いま、テレビやSNS、職場などで、平気でウソをついたり、演技や経歴詐称まで行ったりして、自分を過度に良く見せたがる人、つまり「平気で盛る人」が増えています。記憶に新しいところでは、マスコミを騒がした舛添氏、ショーンK氏、野々村元県議、小保方氏…。そういう人に魅了されたり、簡単に騙される私たちやマスコミ。『自分を「平気で盛る」人の正体』(SB新書)の著者で、現役精神科医の和田秀樹さんに、近年増殖している新たなパーソナリティの諸問題について分析いただいた。


自分を「平気で盛る」人が増殖している


「自分を過度に良く見せようとする"演技性パーソナリティ"の人が増加傾向にある。そういう人たちが主役となり、普通の人たちが騙されやすい時代がやってくる!」

 そんな危うい近未来像が脳裏に浮かんだことから、私は『世界一騙されやすい日本人』(ブックマン社)という本を2014年12月に出版しました。

 増殖しつつある「自分を過度に良く見せようとする」人たち、すなわち"盛りたがる"人たちと、彼らを安易に信じてしまう人たち─その両者が織りなす混沌とした社会の到来を危惧して警鐘を鳴らしたかったのです。

 あれから2年が経ち、ますます"盛りたがる"人たちが増えてきたと感じています。

 言い換えれば、"盛る"ことが当たり前の社会になってきているということです。

 事実、大変多くの人が利用しているフェイスブックやツイッター、あるいはラインやインスタグラムなどのSNSでは、自分を盛ることが当たり前のように行われています。

 たとえば、初めて行った高級レストランのランチの写真と共にあたかも常連であるかのようなコメントを載せたり、街撮りしたクラシック・コンサートのポスターの写真だけを載せて、まるでそのコンサートに行ってきたフリをしたり、自分の机の上に英字新聞などを置いて写真を撮り、それをブログに貼って"意識高い系"を装ったり......このようなことが日常茶飯に行われています。

 人によっては、

「ちょっとした演出の範囲内だ」
「子ども遊びのようなたわいのない程度」

と言うかもしれません。多少なりとも自分を良く見せたいという心理はたいがいの人が持っていますから、この程度の"盛り"に対して、敏感に反応する必要はないと考える人もいるはずです。

 しかし、本人は"ちょっと盛った"程度と捉えているかもしれませんが、真実とは違いますから、本当のことが明らかになったときに、騙されたと思う人もいるはずです。

「あれ? 高級レストランの常連じゃなかったの?」
「クラシックが好きだったのでは?」
「英字新聞が読めるんじゃなかったの?」と。

 ここ数年は、こうした"盛り"に世間が目くらましを食うような事例がたくさん出てきています。たとえば、STAP細胞問題の小保方晴子氏、替え玉作曲事件の佐村河内守氏、号泣会見で知られる野々村竜太郎元兵庫県議などもその例として挙げることができるでしょう。

 いずれも強烈な印象を残した人たちですが、彼らに対して何人かの精神科医が「演技性パーソナリティ障害に当てはまるのではないか」というコメントを残しました。
 私が知っているところでは、小保方氏に関しては熊木徹夫医師が、佐村河内氏に関しては香山リカ医師が、野々村氏に関しては町沢静夫医師がコメントしています。



自分を「平気で盛る」人の正体
和田秀樹 著



和田 秀樹(わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。著書に『医学部の大罪』(ディスカヴァー携書)、『東大の大罪』『この国の冷たさの正体 一億総「自己責任」時代を生き抜く』 (以上、朝日新書)、『テレビの大罪』『学者は平気でウソをつく』(以上、新潮新書)、『「自己愛」と「依存」の精神分析 コフート心理学入門』 (PHP新書)、『人と比べない生き方 劣等感を力に変える処方箋』『だから医者は薬を飲まない』(以上、SB新書)など多数。
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