カルチャー
2016年11月11日
「1日1万歩」が実は体に毒ってホント?──5千人・15年の追跡調査でわかった「奇跡の研究」とは
文・青栁 幸利
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運動強度はどうやって計ればいいのか


 それでも「中強度」がいまいちイメージしにくい、という声が聞こえてきそうですね。 では、より具体的に生活に落とし込んで見ていきましょう。

 まず1つ目は、おそらくほとんどの年代、特に中高年以降の年代の人にとって、「速歩き」こそが「中強度」を代表する運動であるということです。誰にでもできて、しかもほとんどの人にとって「中強度」となる運動はなかなかないものですが、「速歩き」ならば、環境や状況を選ばす、誰でもいつでもできる運動です。

 2つ目は、「あなたの『速歩き』が、あなたにとって本当に『中強度』なのか?」を測る基準は何かということ。

 これが、「なんとか会話ができる程度」の速歩きです。

 「なんとか会話ができる程度」の状態とは、息が楽すぎもせず、かといって息苦しすぎもしない状態を表しています。その状態こそが「あなたの最大酸素摂取量の40〜60%程度」の目安であり、あなたにとっての「中強度」運動なのです。

 のんびり散歩のように、鼻歌が出るくらいの歩き方だと、ゆっくりすぎます(「低強度」)。
 競歩などのように、会話ができないほどの歩き方だと、速すぎます(「高強度」)。

いつ頃から効果が現れてくるか


 では、「8000歩/20分」のウォーキング生活は、どのくらい継続して行うと大きな効果が得られるのでしょうか?

 1つの大きな目安は、2カ月です。

 なぜなら、2カ月であなたの「長寿遺伝子」にスイッチが入るからです。
 「長寿遺伝子? 『遺伝子』よりも『生活習慣』のほうが健康に大きな影響を与えるって言っていたのに、ここでは『遺伝子』の話になるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

 実は長寿遺伝子は、「究極の生活習慣」である「8000歩/20分」を毎日続けることで初めて目を覚ます、ちょっと変わった遺伝子なのです。

 つまり「遺伝子(そのもの)」というよりむしろ「生活習慣と遺伝子(の活性化)」の話です。2カ月間ほど休むと、長寿遺伝子は残念ながら再び眠りに就いてしまいます。ですから、あなたの体内で眠っている長寿遺伝子を目覚めさせ、そして常に活性化させておくためにも、「8000歩/20分」のウォーキング生活を毎日続けてほしいのです。

(了)


やってはいけないウォーキング
青栁 幸利 著



青柳 幸利(あおやぎ・ゆきとし)
東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長
トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了、Doctor of Philosophy(Ph.D.:医学博士)取得。カナダ国立環境医学研究所温熱生理学研究グループ・博士号取得後研究員、奈良女子大学生活環境学部・助手 及び大阪大学医学部・非常勤講師などを経て、東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム・副部長。東京農工大学大学院連合農学研究科・非常勤講師及び星城大学大学院健康支援学研究科・非常勤講師などを兼任。高齢者の運動処方ガイドラインの作成に関する研究に従事し、種々な国家的・国際的プロジェクトの主要メンバーとして先進諸国の自治体における老人保健 事業等の展開を支援している。
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