スキルアップ
2016年11月24日
「ドンシャリ」それとも「ボーカル主体」? 自分好みの周波数特性を見つけて、心地よい音楽を聴こう!
文・ 中村和宏
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最近は、スマートフォンとテレビくらいしか音を聴く装置を所有していない人が珍しくありません。でも、せっかく買ったCDやダウンロードした音楽はできるだけ「いい音」で聞きたいもの。サイエンス・アイ新書『本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践』の著者であり、株式会社ナムコで13年間サウンドデザイナーとして活躍し、現在はフリーランスの作・編曲家である中村和宏さんに、「スピーカー購入時のコツ」を伺いました。自分の好みの周波数特性を見つける方法もわかりますので、ぜひチェックしてみてください。


「良いスピーカー」って何だろう?


 まず理解してほしいのが、そもそも「この世に、完全無欠の完璧な再生能力を持つスピーカーは存在しない」ということです。それに近いスピーカーもありますが、設置場所や部屋の音響次第で音はいくらでも変わってしまいます。機器を買って、適当にその辺にポンと置けば「その機器本来の鳴り=再生能力」を発揮してくれるわけではありません。ここがオーディオ再生の難しいところでもあり、楽しいところでもありますが...。

 また、理想に近いスピーカーは、そもそもべらぼうに高くて、設置に必要な面積もとても広く、よっぽどオーディオを好きな方以外にはお勧めしにくいものです。私がお勧めしたいのは、もっと手軽な製品の中から「自分の好みに合ったスピーカーを選ぶ」という手です。

 音には「大きさ」に加え、「高い」「低い」があります。誰でも「あの人の声は、この人の声より低い」などと認識できます。この音の高低は数値化できます。いわゆる音の周波数です。周波数は音以外でも使われますが、ここでは「周波数=音の周波数」として解説していきます。数値が小さければ音は低くなり、大きければ高くなります。CDの再生可能な周波数(周波数帯域)は、20Hz~22.05kHzです。最近話題のハイレゾ音源だと20Hz~48kHzまでとなり、CDの倍以上高い音、つまり高周波を再生できます。

写真1●周波数特性グラフ

 スピーカーは通常、高周波だけでなく低周波(低い音)から高周波(高い音)まで、まんべんなく再生します。「どのくらいまんべんなく再生できているか」を示すのが「周波数特性グラフ」です(写真1)。縦軸は音の大小、横軸は周波数の大小です。縦軸を上に行くほど周波数の音は大きく、下に行くほど小さくなります。また、横軸を左に行くほど低い音、右に行くほど高い音になります。

 「周波数特性グラフはフラットが良い」と一般的に言われるのは、再生するテスト音源の周波数特性がフラットだからです。正確には「再生音源を忠実に再生できるのが良い」のです。それが理想です。しかし残念ながら、ほとんどのスピーカーはそこまでの正確な再生能力を持ち合わせていません。特にエレクトリックベースのいちばん低い音や、バスドラムの音を正確に再生できる低周波再生に優れたスピーカーは、物理的な問題でほとんど存在しないと言っていいでしょう。ですから気に入ったスピーカーをお手ごろ価格で見つけるなら、正確な再生能力にあまり固執しないほうが良いのです。
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本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践
失敗しない再生機器の選び方
中村和宏 著



中村和宏(なかむらかずひろ)
1967年、大阪府生まれ。5歳からピアノを習う。14歳のころからギターを独学で習得し、作曲も開始。自作曲を演奏するため、ベースも弾くようになる。慶應義塾大学経済学部入学後、バンド活動に勤しむ。ギター、キーボード、ボーカルを担当して、オリジナル・カバー問わずさまざまなバンドやセッションに参加。大学卒業後、サウンドデザイナーとして株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入社。効果音制作、音声収録、楽曲制作とゲームサウンド制作全般に従事。「エアーコンバット22」「タイムクライシス」など、おもにアーケードゲームのサウンド制作を手がける。開発機材の導入アドバイザー業務も並行して担当し、当時、まだポピュラーではなかった音響制作機材、Avid Technology「Pro Tools」の導入に関わる。2006年、バンダイナムコゲームス退社後、有限会社モナカに作・編曲家として参加。「テイルズ オブ イノセンス」(Nintendo DS)「同R」(PlayStation Vita)などのサウンドを担当。2010年、同社退社。現在はフリーランスの作・編曲家として活動中。民生機器の音響調整にも関わる。最新作は「タイムクライシス5」。