カルチャー
2017年4月18日
人工知能は「星新一」になれるのか?
『人工知能解体新書』より
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昨今のビジネスシーンで注目されるテクノロジー「人工知能」。人工知能の応用分野のひとつとして、文章執筆に関する研究が行われているそうです。はたして人工知能は文章を書けるのでしょうか。サイエンス・アイ新書『人工知能解体新書』の著者・神崎洋治さんに伺いました。


「星新一賞」に人工知能が書いた小説が応募!?


『人工知能解体新書』(神崎 洋治 著)

 公立はこだて未来大学の「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」は、人工知能が書いた小説を日本経済新聞者主催の「星新一賞」に2作品を応募し、そのひとつが一次審査を通過した......そんなニュースが流れると、次は人工知能が小説を書く時代の到来か?と、多くの人が注目しました。

 このプロジェクトは、公立はこだて未来大学の松原仁教授を中心に、2012年9月にスタートしました。星新一のショートショート全篇を分析し、人工知能におもしろいショートショートを創作させることをめざすとしています。

 すでに人間と人工知能が共同執筆した短篇が発表され、星新一賞に応募した「コンピュータが小説を書く日」と「わたしの仕事は」の2作品は「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」のホームページで公開されています。

 取材に対しての説明では「人間があらすじを考え、文章は人工知能が一次として作成、人間がそれを手直しているため、全体としては人工知能の作業は1~2割程度、まだまだ大半は人間の作業が必要」とコメントしていました。

 実際の研究は、まず人間が星新一風のショート作品を創作します、この時点で人工知能は関与していません。その小説をいったんバラバラにして、それを元通りに組み上げることがベースになっています。

 さらに、外部からの入力に応じて内部の状態が遷移し、その結果を出力する有限オートマトンと呼ばれる計算モデルを使って、作品の一部を肉付けする作業を試しました。もう少し咀嚼して言うと、重要なストーリーは破綻しない範囲で、状態の移り変わりによって対話にバリエーションをもたせるものですが、この方法は上手く機能しなかったようです。

 結局は最初に人間が創作したストーリーや雰囲気を壊さないよう、人間が作ったルールに沿ってコンピュータが出力し直した、おそらく多くの人にとって"人工知能が小説を創作した"と感じるにはほど遠いものだったのではないかと感じます。

 結論を言えば、まだ人工知能には小説を書くほどの創作能力はありません。これについては後述します。

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人工知能解体新書
ゼロからわかる人工知能のしくみと活用
神崎 洋治 著



神崎洋治(こうざき ようじ)
ロボット、人工知能、パソコン、デジタルカメラ、撮影とレタッチ、スマートフォン等に詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、ベンチャー企業の取材を中心にパソコンとインターネット業界の最新情報をレポート。以降ジャーナリストとして日経BP社、アスキー、ITmediaなどで幅広く執筆。テレビや雑誌への出演も多数。最近はロボット関連の最新動向を追った書籍を執筆し、ロボット関連ITライターとして活躍中。主な著書に『図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本』(秀和システム)、『Pepperの衝撃!』(日経BP)