スキルアップ
2017年5月8日
いまこそ教訓を学ぶべき!国家デフォルトの歴史
文・関 眞興
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EU内のデフォルト危機と南北問題


 近年、EU(ヨーロッパ連合)内での南北問題が顕在化してきている。ギリシア・イタリア・スペインという地中海に面した国々の経済混乱が原因になり、EU全体に危機感が募っている。

 ギリシアの場合、2009年に成立した新政権が、前政権の財政水増し策を明らかにしたことから、その立て直しのためEU本部が厳しい緊縮政策を要求、これに反対したギリシア人の不満がEU離脱の声になるも、いざ離脱できるかというと、ことは簡単には運ばない。2回の選挙を経て緊縮財政を受け入れることでEUの支援を受け入れ、デフォルトは回避された。

 スペインの場合は、2010年に住宅バブルの破綻が明らかになったことから始まった。政府は歳出の削減によって事態の鎮静化を図ったが、インフラ整備から始まり、公務員給与や子供手当、介護職へ給与削減などを打ち出した。このため、財政健全化には一応の効果はあっても、経済を減速させ、何よりも失業者が増加させた、ギリシア同様に庶民生活は厳しい状況に追い込まれる。

 イタリアの場合は銀行危機が原因といえる。そもそも、イタリアは近代的な銀行制度を作り上げてきた国であるが、イタリアの銀行は融資銀行としての性格が強い。このため銀行の利益の大きな部分を占める、投資銀行として得られる利益は小さかった。世界的な景気悪化のなか、銀行業界は苦境に立たされ、国家による支援を求めていた。しかし、その条件として、国民は厳しい緊縮財政を強制されるため、ここでも不満は大きくなった。

 この3国はEU諸国の中では南部に位置するため、「EUの南北問題」といわれる。国民性の問題もあるが、もともと、ドイツやフランスなどに比べて強力な経済力を持っていたわけではない。しかし、それなりの生活水準は享受してきたのだが、ここにきて、どうしてこのような問題が起きてきたのであろうか。

 最大の原因はEU内で使用される単独通貨「ユーロ」に一因がある。これは各国が自由に発行することは認められず、本部によって一元的に管理されている。各国が単独に通貨の発行できれば、各国政府・中央銀行の介入は簡単に行えるが、それができず、その際、ドイツの強力な指導力が発揮されるために、歴史的な国民感情も含めて不満が増幅された。

 歴史は試行錯誤の連続で積み重ねられてきている。さらに悪いことには、失敗に直面しないと新しい事態は出てこないというのが過去の歴史の実際であった。このような時代こそ、歴史、特に過去のデフォルトの教訓を学ぶべきではないだろうか。移民や難民の排斥を叫ぶのは簡単なことであるが、彼らが歴史的の果たしてきた役割を考え、冷静な現状分析を行うことの必要性が求められているのは、まさしく現代である。

(了)
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「お金」で読み解く世界史
関 眞興 著



関 眞興(せき しんこう)
1944年、三重県生まれ。歴史研究家。東京大学文学部卒業後、駿台予備校世界史講師を経て、著述家となる。『学習漫画 世界の歴史』『学習漫画 中国の歴史』(以上、集英社)の構成を手がけたほか、著書に『読むだけ世界史 古代~近世』『読むだけ世界史近現代』(以上、学習研究社)、『総図解 よくわかる世界の紛争・内乱』『さかのぼり世界史』(以上、新人物往来社)、『30の戦いから読む世界史』(上下、以上、日経ビジネス人文庫)、『なぜ、地形と地理がわかると世界史がこんなに面白くなるのか』(洋泉社歴史新書)などがある。