スキルアップ
2017年7月21日
「投資信託」5つの間違った常識と、本当にお金が増える6つの条件
文・篠田 尚子
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日本国内に約6000以上の商品が存在する投資信託。投資信託は「最強の資産形成ツール」と言われているが、その商品数の多さと内容の複雑さから、資産形成に本当に活用できている人は少ないのが実態だ。世界の第一線で活躍する楽天証券ファンドアナリストで、『本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』の著者・篠田尚子さんによると、投資信託について世間では常識だと信じられていることの中には、間違っていることが多数あるという。今回は、その中から投資信託に関する5つの誤解について、篠田尚子さんに語っていただいた。


1)「年代別のオススメ投資信託」を鵜呑みにしない


 投資信託の選び方について紹介している記事の多くは、「20代は投資期間がもっとも長いので、大きなリスクがとれる」、反対に「60代は投資期間が短いので、リスクを小さくする」というように、「投資期間の長さ」を判断基準にして商品を選び、年代別の提案をしています。

 私自身も、過去に依頼を受けた資産形成セミナーで「年代別のオススメ商品」について言及したり、新聞の記事で執筆したりしたことがあるのですが、年代別に商品をオススメすることにずっと違和感を抱いていました。

 なぜなら、現代の投資理論では「年代別のオススメ商品」は存在しないからです。

 現代の投資理論では、「投資する期間」は金融商品の選択に大きな影響は及ぼさないとされています。年代別に商品をオススメする記事は、「リスクの大きい商品を買っても、投資期間を長くすればリスクを小さくできる」という考え方に基づいて書かれていると推測されますが、「投資する期間」によって商品自体のリスクの大きさが変化することはありません。

 30代の人にとって「優れた商品」であるならば、それは60代の人にとっても「優れた商品」になります。年齢によって、「優れた商品」が異なることはないのです。

 優先すべきは、「本当に優れた投資信託」を探すことです。

 その次に、自分の年齢や資産状況、投資経験、性格などを考慮して、「本当に優れた投資信託」の中から最適な商品を購入するのが正しい手順といえます。

 こうした手順をわかった上で年代別に商品を推奨する記事を参考にするのはよいのですが、現実は、多くの方が間違った優先順位で商品を選択してしまっているのではないでしょうか。

 「本当に優れた投資信託」は、本来、購入者の年齢・年代とは切り離されて語られるべきであるということを頭に入れておいてください。

2)「人気ランキング」は「買ってはいけない商品」ばかり


 「売れている投資信託」が「優れている投資信託」であるとは限りません。現に、「投資信託の人気ランキング(売上ランキング)」には、「毎月分配型」のように問題のある商品が含まれていることが多いのです。

 長期投資を前提にすると、運用で得られた利益は新たな運用に回すのが望ましいといえます。また、利益から出される分配金には税金がかかるので、税金の徴収が前倒しになってしまう点も、毎月分配型のデメリットです。さらに、分配金の送金にかかる経費や、分配金の支払いのたびにおこなわれる運用会社の決算の費用もバカになりません。(こうした経費は、当然、購入する側の手数料などに上乗せされています)。

 このように、人気ランキングは、問題の多い毎月分配型の商品ばかりがランクインされているので、あまり参考にしてはいけないのです。

 ただし、こうした批判は、以前から存在しています。これまでに新聞やマネー誌、ネット上の記事などで、多くの専門家によって毎月分配型商品の批判がされてきましたが、それをまったく無視するかのように、毎月分配型は売れ続けているのです。

 人気ランキングは、金融機関の"販売力"が反映される傾向にあるので、金融機関の販売窓口でいまだに毎月分配型の商品が積極的に勧められているということも影響していると思われます。



本当にお金が増える投資信託は、この10本です。
篠田 尚子 著



篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト。 慶應義塾大学法学部卒。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。 国内の銀行において個人向け資産運用のアドバイス業務に携わった後、2006年ロイター・ジャパン(現トムソン・ロイター・マーケッツ)入社。傘下の企業で、投資信託評価機関として世界最高峰に位置づけられるリッパーにおいて、世界中の機関投資家へ向けて日本の投資信託市場調査および評価分析レポートの配信業務に従事。同時に、香港やシンガポールなど世界各国で開催される資産運用業界の国際カンファレンスで日本の投資信託市場にまつわる講演も数多く行う。 2013年にロイターを退職し、楽天証券経済研究所に入所。日本の投資信託市場動向を国内外のメディア等へ配信しながら、海外の投資信託市場の分析も手がけている。
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