カルチャー
2017年7月18日
養老孟司×名越康文「《話せばわかる》は大ウソです。」
『「他人」の壁』より
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「なぜ、相手は自分をなかなか理解してくれないと思ってしまうのか?」
「なぜ、いつもあの人には話が通じないと思ってしまうのか?」
かつて『バカの壁』(400万部超)で大ヒットを記録した解剖学者の養老孟司氏と、心理学の専門家でありタレントとしても注目されている名越康文氏は、自分と他人には理解の「壁」が存在し、ときにそれが邪魔をしているのだと、最新刊『「他人」の壁』(SB新書)の中で語っている。ここでは、お二人の対談を引用しながら、こうした「他人の壁」と、どのように向き合ってよいのかを探っていこう。


他人を無理に理解する必要はない


「他人の気持ちを理解したい...」
「相手のことがわからない、どうしたら人を理解できるのか?」

 メールやブログ、LINEなどコミュニケーソツールが多岐に渡っている今は、コミュニケーションの頻度が高そうに見えて、かえって相手のことがわからなくて悩んでいる人が多いようである。

 この「相手を理解したい」「理解できるはず」という現代人の姿勢について、養老氏と名越氏は次のように語る(以下、敬称略)。

養老:僕に言わせると、なんで(相手を)わからなきゃいけないのかという話なんですけどね。わからなくたって、お互いがぶつからなければいいだけなんですよ。自分はこっち行くけど、あなたはあっちへ行く。そういうことでまったく問題ないし、人ってそういうものだと思いますけどね。

名越:要するに、養老先生とすれば、わからなくてもいいから、同じ方向へ行ってぶつからないように、少し調整するということですか。

養老:ポイントは実はそこだけ。相手が出しているサインのようなものがいくつかあるはずなんで。それだけ押さえておけばいいんです。「あ、これが出たときは話しかけないほうがいいかな」とか、「今は近づかないほうがいいな」とかね。だって、本当に他人をわかろうなんて思ったら、えらい大変なことになってしまいますよ。僕なんか女房と、何十年一緒にいるかわからないけど、いまだに全然わからない。猫を飼っているけど、猫のほうがわかるかもしれない。けっこう喋りますからね、うちの猫は(笑)。

(『「他人」の壁』より)

 このように、相手を無理してわかる必要はなく、さらにお二人は、「それは本質的には相手を理解することはできないという意味でもあって、そのことがわかれば、かえって折り合いがつくこともある」としている。

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「他人」の壁
養老 孟司・名越 康文 著



養老孟司(ようろう・たけし)
1937年、鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年、東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。1989年、『からだの見方』でサントリー学芸賞を受賞。1985年以来一般書を執筆し始め、『形を読む』『解剖学教室へようこそ』『日本人の身体観』などで人体をわかりやすく解説し、『唯脳論』『人間科学』『バカの壁』『養老訓』といった多数の著作では、「身体の喪失」から来る社会の変化について思索を続けている。

名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。