ビジネス
2017年7月27日
元財務官僚・高橋洋一氏は「森友学園問題」「加計学園問題」をどう分析するのか
文・高橋 洋一
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「総理の意向」はでっち上げ!?


 では、なぜ文科省の複数の官僚に内部文書が共有されていたのだろうか? 筆者が財務省の官僚だったときの経験からも、官僚が交渉相手となる他省庁の官僚の要求について文書で大げさに強調することは、かなり一般的なケースといえる。これは民間でもよく見られる話だ。

 議論で負けた官僚が、負けたことを【正当化】するために、文科省内に向けて書いたのではないだろうか。「総理の意向なんだから、成す術がなかった」ということを強調したいがために、半ばデッチ上げた文言だろう。情報の価値としては、怪文書と大した違いはない代物である。そんな程度のものにもかかわらず、マスコミは鬼の首でも取ったかのように、文書を決定的な証拠と決めつけている。

 加えて、新設認可が加計学園1校のみにとどまったことについても触れておこう。

 規制緩和推進派と既得権維持派の議論の過程で、既得権維持派のバックにいる獣医師会も、新設反対だけではもたないと考えたようだ。途中から、1校であれば容認というスタンスに変わったことが公表資料から明らかになっている。1校容認ということであれば、ウェイティングリストに載っている最初のところが優先的になる。加計学園が新設を申請したのは2007年である。もう1つ申請していた京都産業大学は2016年だ。この順番をひっくり返したのであれば問題だが、申請が古いほうを優先しているのだから問題にはならないだろう。マスコミには、こうした視点も欠けている。

 そもそも、規制緩和を推進する側は新規参入を排除する理由はない。「1校のみ容認」というのは、獣医師会の1校という養成を受けて、規制緩和推進派と既得権維持派が折衝の過程で作った落し所だと考えられる。

森友学園問題の二の舞に


 筆者が加計学園問題で述べてきた解説は、公表されている事実に基づいた単純なものだ。しかし、野党やマスコミはこの真相にまったくたどり着けていない。その理由は、目の前の現象だけしか見ていないからだ。

 一方の当事者だけから示された「文書」や「会見発言」を、金科玉条のように受け取ってしまっているから、加計学園問題には「総理の意向」が働いていると思い込んでしまっている。

 この構図は、例の森友学園問題とまったく同じである。地中ゴミの存在を伝えずに売却をしようとした近畿財務局の担当者のミスで、国有地が安く買えただけなのに、そこに政治家の関与を匂わせている森友学園の籠池泰典理事長の発言だけを頼りに、安倍政権を追求する野党とマスコミ――。

 筆者には、この籠池氏と、規制緩和派との戦いに負けただけにも関わらず、安倍政権の関与に言及する文科省前事務次官・前川喜平氏が完全にダブって見える。そして、森友学園問題が空振りに終わった教訓をマスコミはまったく学んでいない。

 加計学園問題が発覚した当初、マスコミは「総理の意向」の存在と、前川前文科次官の記者会見の内容が正しいという前提で報道していた。そんな中、本書で筆者はマスコミに先駆けて「前川証言は間違っている」と指摘している。

 本書の発刊後、加戸・前愛媛県知事、京都産業大学の記者会見が行われたことにより、筆者の主張の正しさが証明され、筆者の先見性は明らかになっている。

マスコミがニュースの真相を掴めない理由


 思い起こしてみれば、マスコミが情報を分析し、取捨選択をする能力は、以前から無かったといえる。

 筆者は、財務省にいたときにマスコミ対策を担当したことがある。ニュースがあるときは、マスコミ用にまとめた資料のコピーを持って行き、記者たちに「レク」をしていた。レクというのはレクチャーのことで、たんに資料の解説をするだけである。すると、その日のニュース番組や翌日の新聞は、資料の内容をそのまま鵜呑みにした報道をしてくれるのだ。財務省に都合の良い政策のキャンペーンをすることも簡単だった。

 日本のマスコミの最大の問題点は、自分たちで一次情報やデータにあたって調べる、ということができないところである。その結果、官僚が出したというだけで内容のないメモを信用し、裏付けをとることもせず、垂れ流しているのである。

 実は、加計学園問題にしろ、森友学園問題にしろ、より重要な問題が露呈していることを見過ごしている。それは、単なる公務員にすぎない官僚が、あたかも政治家のように、裁量権を振りかざしている事実だ。官僚が自分たちの都合のいいように行政を歪めている実態が透けて見えているのである。そういえば、各省庁の許認可・予算配分は天下りと密接な関係がある。今回話題の前川氏は、他方で天下りに精を出し国家公務員法違反をしている。これは、前川氏のいう行政がゆがめられたというのは、天下りをするための許認可に多少は関与するなという意味だろう。

 本来、マスコミや野党は、この2つの問題をとおして、官僚が行政を歪めている実態を追求しなければいけない。しかし、それを追求しているマスコミは皆無である。

 既得権を維持することに邁進し、官僚の天下りを墨守し続けてきた前川氏が、こともあろうに"反権力のヒーロー"のように扱われている現状では、それは望むべくもないことかもしれない。

──SB新書『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』では、ここで掲載した「加計学園問題」「森友学園問題」を皮切りに、「年金問題」「消費税増税問題」などのウラに隠された真の狙いを高橋洋一さんが鋭く分析し、日本の官僚と官僚機構の弊害、および、その解決策を提示している。

(了)
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大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実
高橋 洋一 著



高橋 洋一(たかはし よういち)
株式会社政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍した。2008年、『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。日本経済をテーマにした著書多数。