カルチャー
2017年8月29日
大切な人の「死」・自分の「死」との向き合い方
文・鈴木 秀子(聖心会シスター)
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「日常生活」が心に「豊かさ」を与えてくれる


 ここで1つ質問です。

「明日の朝、必ずあなたは死にます。さて、あなたは今日どのように過ごしますか?」

 ちょっとしたゲームだと思って、この問いの答えを考えてみてください。

「全財産を持って、お買い物に行く」
「おいしいディナーを食べに行く」
「大切な人と会う」

 様々な答えが返ってきそうですね。

 しかし、心底正直な気持ちになった時に出る、最も多い答えは次のようなもの。

「いつもと同じ通りのことを丁寧に行い、安らかな気持ちで眠る」

 何だか、意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、人生の最後に「日常」を大事に味わいたいという方は本当に多いのです。さらに、

「周りの人に『ありがとう』と言って、心からの感謝の気持ちを伝えておきたい」

 こう望まれる方がほとんどなのです。

 このエピソードからわかること。それは「日常生活」という「一見ありふれたもの」が、私たちに与えてくれている豊かさです。

「毎日、同じ繰り返しなんて退屈でたまらない」「何も起こらない日常に飽きている」。そう反論する人がいるかもしれません。でも本当は誰でも、心の奥底で「日常生活」を送ることで、心を満たしたり、大きな癒しを与えられています。私たちは本当は、"日常"を積極的に選びとっている部分も大きいのです。

 さらに「よりよく生きたい」と願うのなら、次のワークを行ってみてください。

「今、あなたが本当にほしいものは何ですか?」。そして「それが手に入ったら、どうなりますか?」と問い続けてみてください。この質問に徹底的に答えていくと、「あなたが行うべきこと」「あなたがやりたいこと」が見えてきます。例を挙げてみましょう。

Q「今、あなたが本当にほしいものは何ですか?」
A「ハワイの別荘が欲しいです」
Q「それが手に入ったらどうなりますか?」
A「のんびりしてゆっくりできます」
Q「のんびりしてゆっくりできたら、どうなりますか?」
A「仕事からも解放されて昼寝ができます」
Q「仕事からも解放されて昼寝ができたら、どうなりますか?」
A「......」

 このように、たいていの人は途中で答えに詰まってしまい、「最初に答えたものが本当にほしいものではなかった」と気づくことが多いのです。ここではあえて模範解答はお伝えしません。あなた自身の力で、素敵な回答にたどりついてほしいと願っています。

「明日の朝、必ずあなたは死にます。さて、あなたは今日どのように過ごしますか?」
「今、あなたが本当にほしいもの(あるいは、したいこと)は何ですか?」

 この2つの問いを、常に自分に投げかけるようにしてください。「死」を意識することで日常が愛おしくなるとともに、乱れがちな心も整ってくるはずです。

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死は人生で最も大切なことを教えてくれる
鈴木 秀子 著



鈴木 秀子(すずき・ひでこ)
聖心会シスター/文学博士。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。 フランス、イタリアに留学。スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授(日本近代文学)を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。長年にわたり、全国および海外で講演活動を行い、多くの相談を受けてきた。特に、死が近づく人やその関係者からの相談が非常に多い。世界中の病院をめぐり、東日本大震災の被災地巡りを頻繁に行っていることや、自身が臨死体験をしたことが関係している。著書に44万部突破の『9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係』(PHP研究所)のほか、『死は人生で最も大切なことを教えてくれる』(SBクリエイティブ)、『死にゆく者からの言葉』(文藝春秋)などがある。