ビジネス
2017年11月13日
宮崎学×佐藤優「トランプ大統領がつくりだす予測不能な世界」
『「暴走する」世界の正体』より
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先日のトランプ大統領の来日に、警視庁は1万8000人の警察官を動員した。これはアメリカ大統領の来日時としては過去最大の規模となる。過激な言動で注目を浴びるトランプ氏の来日は、下手をすれば今後のアメリカとの関係だけでなく、北朝鮮をも巻き込んでの暴走のきっかけになるかもしれない。それを予見するかのように、最強論客として名高い宮崎学氏と佐藤優氏は「トランプは何でも思いつきでやる」と、最新刊『「暴走する」世界の正体』(SB新書)で語っている。ここではお二人の対談を引用しながら、主に日本とアメリカ、北朝鮮の予測不能な関係を探っていく。


国際法をも無視し「暴走する」北朝鮮の狙いとは?


 2017年9月3日、北朝鮮が水爆実験を行い、実験は成功した可能性がある、と見られている。日本を震撼させる出来事だが、佐藤氏は次のように分析している(以下、佐藤氏と宮崎氏の発言は、すべて『「暴走する」世界の正体』からの引用)。

佐藤:原爆や水爆を持っていても、それらを弾道ミサイルに装填するためには小型化が必要になる。北朝鮮が原水爆の小型化に成功しているかどうかが今後、重要な分析課題になる。いずれにせよ小型化の成功は時間の問題なので、日本が北朝鮮の核ミサイルの脅威に晒される状況が近未来に起きる。

 すでに度重なる北朝鮮の弾道ミサイルの発射に、日本の危機感はピークに達している。この水爆実験の5日前にも北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本の政府とマスコミが一種のパニックを起こした。だが、事態はなにも北朝鮮と日本だけの問題でない。弾道ミサイルの発射による、アメリカのトランプ大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の言葉の応酬戦を見ても明らかだ。このことについて、佐藤氏は次のように分析している。

佐藤:北朝鮮の目的は、アメリカに金正恩政権を認めさせ、体制の安全を確保することなので日本は直接の標的となっていない。そうなるとアメリカの姿勢が決定的に重要になるが、トランプ大統領は北朝鮮に対する武力攻撃に言及しても、第二次朝鮮戦争を引き起こすような事態は避けると思う。そう遠くない時期に米朝二国間交渉が始まり、北朝鮮が北米大陸に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を断念すれば、アメリカが北朝鮮の核兵器と中距離までの弾道ミサイルの保有については認めるという妥協が成立するかもしれない。

 だとすると、日本が北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に、過敏に反応する必要はないのだろうか。一方、宮崎氏は、自分が直接知る人から聞いた具体的情報を基にして、社会的な面から北朝鮮を見ている。

宮崎:私の知り合いの中には、1960年代の帰還運動の頃に北朝鮮に帰っている連中もけっこういるんです。みんな勉強はできて優秀でしたね。彼らの話を聞くと、実は北朝鮮政府の武力衝突への警戒心は「北方」にあると言うんですね。北朝鮮から見ての北、すなわち中国とロシアからの侵攻です。アメリカや日本、かつての倭冠もたいしたことはないのだそうです。だから、ずっと中国大陸の動きを意識して警戒してきて、「中国とどううまく付き合っていくか」という課題を抱えてきたのでしょう。現在の「金正恩的なあり方」みたいなものは、そういう歴史的な経緯があったのだということのようです。

佐藤:宮崎氏の見方を敷衍すると、北朝鮮はアメリカとの安定的関係を構築し、北方からの、特に中国からの脅威に備えるという戦略を持っていることになる。長期的視点では宮崎氏の見方が正しいと思う。

 つまり、北朝鮮の弾道ミサイルの目的は、日本ではなくアメリカ、中国、ロシアに対する牽制だというのだ。

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「暴走する」世界の正体
最強論客が読み解く戦争・暴力・革命
宮崎 学・佐藤 優 著



佐藤優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。1985年同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省に入省。在英国、ロシア連邦日本国大使館勤務等を経て、本省国際情報局分析第一課にて主任分析官として、対ロシア外交を担う。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年最高裁で上告棄却、外務省失職。現在、執筆、講演活動に取り組む。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞。『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

宮崎学(みやざき・まなぶ)
1945年京都府生まれ。早稲田大学中退。父は伏見のヤクザ、寺村組組長。早大在学中は学生運動に没頭、共産党系ゲバルト部隊隊長として名を馳せる。週刊誌記者を経て家業の建築解体業を継ぐが倒産。半生を綴った『突破者』(南風社、のちに新潮文庫)で衝撃デビューを果たし、以後、旺盛な執筆活動を続ける。佐藤優氏との共著に『「殺しあう」世界の読み方』(アスコム)、『戦争と革命と暴力』(祥伝社)などがある。