ビジネス
2017年11月13日
宮崎学×佐藤優「トランプ大統領がつくりだす予測不能な世界」
『「暴走する」世界の正体』より
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マイナスの改革、トランプ大統領は戦争バブルを狙っている


 大統領就任から僅か1ヵ月の2017年2月、トランプ氏は軍事費の1割増額を公表。この歴史的増額は単純計算で6兆円にも及ぶ。この背景には、中東や北朝鮮との関係の悪化があるのは想像できるが、宮崎氏、佐藤氏は「トランプは何でも思いつきでやる」と見ており、この前提での議論が必要だという。

佐藤:トランプは何でも「オバマの反対」をやっていますよね。ここは単純だから行動が読みやすいですよ。でも、自分が関心を持ったら、何でもやりますから、これからも何が起こるかわからないですよ。

宮崎:そういう方向はずっと続くと思います。これは、何か戦略があってやっているわけではなくて、政治が何かをわかってないとか、権力というものをあまり知らない人たちが政権を取った時に、よくやる手法ですよね。

 北朝鮮への空爆が日本に飛び火する事態が、さらに現実味を帯びてくる見方だが、宮崎氏は自身の経験から、トランプ氏にあるセンスを感じていた。そのセンスというのは、地上げ屋だ。

宮崎:佐藤さんの指摘通り、何も考えていないのはよくわかりますよね。いい人のわけはないけれど、昔の日本にもけっこういましたね。特に80年代のバブル期のバブル紳士とか、自分もやってたけど地上げ屋とかね、そういう人たちの感じに近い気がします。私は地上げ屋をやって、自分は金儲けのセンスがまったくないと気づきましたが、彼らは信念がまったくないのに、金儲けのセンスは抜群なんです。これからは、アメリカでも戦争によるミニバブルみたいなことは起こるでしょうね。アメリカは以前から戦争でしか経済を回せませんから。

佐藤:軍備と戦争は最大の消費ですからね。

 トランプ氏は来日したとき、米国の戦闘機やミサイルなどの防衛装備品の日本への輸出に意欲を示したが、これは戦争バブルを起こすための序章なのかもしれない。トランプ氏の正体が「戦争バブル紳士」であるなら、暴走は避けられないのかもしれない。ただ、バブルはいつか弾ける運命にある。このことについてお二人はトランプ氏の思惑を「マイナスの改革」と結論づけている。

 SB新書『「暴走する」世界の正体』では、ほかにも現代日本、革命の可能性、沖縄問題などを取り上げ、お二人の見方の違いによる知的格闘技が展開されている。読み進めていけば、狂気に駆られた真の世界の正体が見えてくるはずだ。

(了)
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「暴走する」世界の正体
最強論客が読み解く戦争・暴力・革命
宮崎 学・佐藤 優 著



佐藤優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。1985年同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省に入省。在英国、ロシア連邦日本国大使館勤務等を経て、本省国際情報局分析第一課にて主任分析官として、対ロシア外交を担う。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年最高裁で上告棄却、外務省失職。現在、執筆、講演活動に取り組む。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞。『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

宮崎学(みやざき・まなぶ)
1945年京都府生まれ。早稲田大学中退。父は伏見のヤクザ、寺村組組長。早大在学中は学生運動に没頭、共産党系ゲバルト部隊隊長として名を馳せる。週刊誌記者を経て家業の建築解体業を継ぐが倒産。半生を綴った『突破者』(南風社、のちに新潮文庫)で衝撃デビューを果たし、以後、旺盛な執筆活動を続ける。佐藤優氏との共著に『「殺しあう」世界の読み方』(アスコム)、『戦争と革命と暴力』(祥伝社)などがある。