カルチャー
2018年3月19日
健診でオールAほど早死にしやすい本当の理由
『やってはいけない健康診断』より
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日本では多くの人が「健康のため」と称し、職場の健康診断や人間ドックを受診する。ところが、「定期健診、人間ドックが、かえって寿命を縮める罠!」「健診でオールAほど早死にしやすい」と警鐘を鳴らす医者もいる。乳房温存療法のパイオニアで、がん放置療法で注目される近藤誠氏と、精神科医として老人医療に携わり、医療関係の著書も多数ある和田秀樹氏だ。「正常値神話」が根付く日本では、にわかには信じられない人が多いだろうが、「職場の健診や人間ドックは、欧米には存在しない」と言われれば、どうだろうか。その真相を探るべく、最新刊『やってはいけない健康診断』(SB新書、近藤氏と和田氏の共著)から見ていく。


健診オールAでは、50歳以降にガタガタっとくる


患者本位の治療を実現するために講演や出版を通して啓蒙を行う近藤誠氏。自身、医者でありながら、40年間一度も健診を受けていない

 SBクリエイティブの編集部員(男性、43歳、身長171㎝、体重62㎏)の健康診断の評価は見事に「オールA」。この文句のつけどころのない健診データを、近藤氏と和田氏は次のように分析している(以下、近藤氏と和田氏の発言は、すべて『やってはいけない健康診断』からの引用)。

近藤 身長が171㎝で62㎏。BMI21だね(体格指数。体重〈㎏〉÷身長〈m〉÷身長〈m〉で計算)。これがまず、やせすぎなんだなぁ。

和田 BMIが21しかないのは、かなり問題。元気に長生きするには、本当はあと10㎏ほしいぐらい。中性脂肪も150以上あったほうがいいんだけど、64しかないですね。

編集部 やせすぎ、ですか......。ちゃんと食べているんですが、太りにくい体質で。学生時代から今までの20年で、体重は5㎏増ぐらいです。標準はBMI22だから、自分では、まあふつうの体重かなと思っていました。

近藤 40歳以上の日本人35万人の調査データを見ると、メタボ健診で「肥満」とされる、BMI25から27(身長170㎝で75㎏前後)の人たちがいちばん長生きです。そこからBMIが下がるにつれて、死亡率がだんだん上がっていきます。あなたの場合、21でしょう。すると25の人に比べて、死亡率が十数%増しになる。(グラフ1)

■グラフ1 ※クリックすると拡大

編集部 そんなに......。

 編集部員が絶句するのも頷ける人は多いだろう。適正体重というと、単純に「身長-110」と医者から教えられた人も多いだろう。たしかにこの計算式での編集部員の適正体重を見てみると61㎏でメタボ健診で引っかからない。これでは死亡率十数%増しにするための健康管理になってしまう。

和田 週刊誌が最近よく、健診はおかしいとか、クスリは危ないって書いてますよね。医者よりも週刊誌のほうがホントのことを言ってるなんて、ヤバいよ(笑)。専門家の反論もないしね。

近藤 LDL(いわゆる悪玉コレステロール)も低いね。

編集部 98㎎/dLです。基準値は70~139なんですが......。

和田 あなたの場合、救われているのは「クスリによって低くなっているわけじゃない」ってことです。クスリで無理に下げてこの値だと、問題だけどね。糖尿病の指標になるヘモグロビンA1Cも、5.2%というのもちょっと低いな。あなたは若いからまだいいとして、お年寄りは基準値より高い7あたりが、いちばん長生きすると言われています。どの数値もだんだん上がっていってもらわないと、50代以降ガタガタっとくるから。

編集部 「人生100歳時代」って最近言われますが、まずは50歳以降を乗り切れるよう、「オールA」で満足しないようにします。



やってはいけない健康診断
早期発見・早期治療の「罠」
近藤 誠・和田 秀樹 著



近藤誠(こんどう・まこと)
1948年東京都生まれ。近藤誠がん研究所所長。73年慶應義塾大学医学部卒業、同大学医学部放射線科入局。79~80年アメリカ留学。83年から同医学部放射線科講師を務める。乳房温存療法のパイオニアとして知られる。96年の『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)以降、医療界にさまざまな提言を行っている。2012年には第60回菊池寛賞を受賞。14年慶應義塾大学医学部を定年退職。13年「近藤誠がん研究所 セカンドオピニオン外来」を開設している。

和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府生まれ。和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師。1985年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て現職。
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