カルチャー
2015年9月18日
「うちの息子ってヘン?」─息子に手を焼く妻に知ってほしい「男子育児」の秘訣
[連載] うちの息子ってヘンですか?【1】
文・小崎 恭弘
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男の子たちと友達のように接した保育士時代


先生は友達

 保育士時代を振り返ると、僕は男の子から絶大なる人気がありました。いつでも「コザキー、遊ぼうー」「コザキー、こっち来てー!」と、いろんなところからご指名がかかりました。
 彼らは、ほかの女性の先生にはちゃんと「○○先生」と言っているのですが、僕にだけは呼び捨てです。「あんなぁー、コザキ、昨日なぁー」「コザキはお母さんおるん?」など、ほとんどツレ(友達)感覚ですね。

 名前の呼び方には、その人との関係性が表れます。そう思うと、保育所の男の子たちは、僕との関係性に、「友達」あるいは「僕より優位に立ちたい」ということを感じていたのでしょう。僕もその思いを受け止めて、呼び捨てでも目くじらを立てて怒ったりはしなかったです。彼らと、友達のように同じ立場や目線で接していきたいという思いを持っていました。

 おもしろかったのは、5歳児の年長クラスの担任をしたときのことです。
 次の4月から通う小学校の話になりました。

 まさしくん「オレは、春風小学校に行くねん」
 せいやくん「僕は、甲子園小学校やでー」
 コザキ「あーそうなんやー。行くとこ違うねんねー。ちょっと寂しいなぁー」
 まさしくん「じゃー、コザキはどこの小学校行くの」
 コザキ「えっ、僕? いや、あの......もう小学校行かへんねん」
 まさしくん「えっ? 小学校行かへんの? どうするん?」

 と、本気で心配されました。まさしくんは、僕のことを本当に友達だと思っていたようで、一緒に保育所を卒園して小学校に進級すると思ってくれていたようです。

男の子が求めていることは「遊び・楽しさ」


 このエピソードから僕がお伝えしたいのは、「男の子が求めていること」です。
 家庭と保育所、お母さんと保育士という違いはあるものの、僕は、男の子が求めているものは、基本は、どこでも誰に対しても一緒だと考えています。それはとても単純で、「一緒に遊んでくれる人、楽しく過ごせる人」です。

 彼らの求めているものは「遊び・楽しさ」なのです。これは子ども全般にいえることですが、とりわけ男の子にはその傾向が強く、遊ぶことへの意欲がより強いように思います。ですから、まずお母さんも、男の子とかかわるときには、この「遊び・楽しさ」の感覚や思いを大切にしてほしいのです。

 では、男の子が求める「遊び・楽しさ」の感覚をどうしたら共有できるのか? それには、男の子の感覚や特性を理解することから始めましょう。

(続く)





うちの息子ってヘンですか?
男子育児のしんどさが解消される本
小崎 恭弘 著



【著者】小崎 恭弘(こざき やすひろ)
大阪教育大学教育学部 准教授。元保育士。1968年兵庫県生まれ。兵庫県西宮市公立保育所初の男性保育士として12年間、園児たちの保育に携わる。その間には、3人の息子の父親として育児休暇を3回取得。 自身も3兄弟の長男であり、高校生の頃から野外活動の「キャンプのお兄さん」として、幼児や小学生男子ともどっぷりかかわってきた「男の子のプロ」。NHK Eテレ『すくすく子育て』ほか、テレビや新聞、雑誌などでも活躍中。年間60回ほどの講演では、笑いあふれる漫談ふう育児指南を披露し、大人気を博す。NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。著書に、『男の子の本当に響く叱り方ほめ方』『思春期男子の育て方』(以上、すばる舎)、『わが家の子育てパパしだい!―10歳までのかかわり方』(旬報社)など。
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