カルチャー
2016年2月19日
野村克也氏が語る「新人を育てる指導者の心構え」
[連載] 名将の条件――監督受難時代に必要な資質【4】
聞き手・SBCr Online編集部
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今年もプロ野球キャンプは終盤にさしかかり、いよいよオープン戦が始まる(2月20日~3月21日)。昨年秋にドラフトで入団した新人選手が注目されるなか、オコエ(楽天)、平沢(ロッテ)など、シーズンでの即戦力としての活躍が期待される選手もいる。最近『名将の条件 監督受難時代に必要な資質』(SB新書)を刊行し、いまの時代に必要な指導者のあり方を提言した野村氏に、今回は新人選手をどう育てるかにについて、お話を伺った。


新人選手は「見守る」と同時に、「見抜く」ことが大切


「親子ほどの年齢差になってしまった楽天監督時代は、若い選手との接し方を変えていた」と語る野村氏(撮影:SBクリエイティブ)

 プロ野球の世界での成功を夢見て、毎年秋のドラフトでは有望なアマチュア選手が入団してくる。高校から直接入団してくる選手もいれば、大学、社会人を経由して入団してくる選手、最近だと独立リーグを経験して入ってくる選手も少なくない。

 だが、プロで通用するだけの体力や技術が備わっているかと言えば、そうでもない。ドラフトの上位指名で入団した選手はさすがに即戦力の評価を得ていたわけだから、それなりのスキルを持っているが、下位指名された選手だと、2~3年先の将来性を買われて入団してくるケースが比較的多い。

 そこで私は新人選手に対しては、あれこれ指導したりせずにじっと見守ることにしている。スカウトが見定めて指名した選手たちである。どこかに必ずキラリと光るものがあって獲得しているわけだから、能力的には期待できるはずだ。

 それならむしろプロの世界に入ってきて、野球に対する取り組み方は真面目なのか、あるいは自ら考えながら練習しているのか、手を抜いて適当に練習をしていないかどうかなどを観察することで、その選手の性格を見抜くようにしていた。

「人生とは評価に始まって評価に終わる」

 これは私がミーティングで選手に話していたことだ。結局、人生は他人からの評価で決まってしまう。そしてどこまでいっても他人からの評価から逃れることはできない。

 この大前提を理解していれば、「どうすれば評価を上げられるか。どうしたら監督の目に留まるのか。そのために今、自分は何をすればよいのか」と自然に考えることができる。それさえ理解していれば、右も左もわからないプロ野球の世界に足を踏み入れたとしても、自らの手で切り開いていくことができる。

 プロ野球の選手は、自分がいくらなりたいと思っても、そう簡単になれる職業ではない。幼少の頃から野球を始め、高校、大学、社会人と続けていくなかで周りが評価し、スカウトが認めてくれて、晴れてドラフトで指名されてできる仕事だ。

 一球団あたり6~7人ほど指名されることを考えると、毎年70~80人は12球団のどこかのチームに入団している計算になる。その意味では、その選手のこれまでの地道に努力している姿を、どこかで見てくれた人がいて、またそれを認めてくれた人がいたということだろう。

 新人にとって一番大切なのは、野球をすることが仕事だと自覚して、真摯(しんし)に取り組んでいるかという姿勢である。無論、2年目以降の選手にも同様のことが言えるのではあるが、そのような気持ちを持ち続けるために普段からどのようなことを考えているのかをいち早くつかむのも、指導者の大切な役割である。

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名将の条件
監督受難時代に必要な資質
野村 克也 著



野村 克也(のむらかつや)
1935年生まれ。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。現役27年間で、歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王など、その強打で数々の記録を打ち立て、不動の正捕手として南海の黄金時代を支えた。「ささやき戦術」や投手のクイックモーションの導入など、駆け引きに優れ工夫を欠かさない野球スタイルは、現在まで語り継がれる。70年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、四球団で監督を歴任。他球団で挫折した選手を見事に立ち直らせる手腕は「野村再生工場」と呼ばれる。 ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。インタビュー等でみせる独特の発言は「ボヤキ節」と呼ばれ、 その言葉は「ノムラ語録」として野球ファン以外にも親しまれている。