カルチャー
2016年5月12日
「事実上の弾道ミサイル」とは何か?
[連載] 北朝鮮「核ミサイルの驚異」【1】
文・かのよしのり
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テレビの報道でよく耳にする「事実上の弾道ミサイル」という言葉。これは、北朝鮮が人工衛星を打ち上げたときに使われます。なぜ他の国では言われず、北朝鮮だけが「事実上の弾道ミサイル」と言われるのか。サイエンス・アイ新書『ミサイルの科学』の著者・かのよしのりさんに語っていただきました。


衛星打ち上げロケットと弾道ミサイルの技術は同じもの


『ミサイルの科学』(かのよしのり 著)

 北朝鮮が人工衛星を打ち上げたとき、テレビなどの報道では「事実上の弾道ミサイル」という言い方をしています。たしかに衛星打ち上げロケットの技術と、弾道ミサイルの技術は、ズバリ「同じもの」といっても過言ではありません。事実、米国とロシアの核軍縮の結果、余剰となった弾道ミサイルを使って衛星を打ち上げた例は多くありますし、それ以前からも弾道ミサイルと同じ型のロケットで衛星の打ち上げは行われてきました。

 ですから「事実上の弾道ミサイル」なのは、何も北朝鮮の衛星打ち上げロケットだけではなく、世界中の衛星打ち上げロケットが「事実上の弾道ミサイル」なのです。拙著『ミサイルの科学』(サイエンス・アイ新書)でも触れましたが、日本のイプシロンロケットなどは、北朝鮮のテポドンより、よほど弾道ミサイルらしいものです。

 それなのに北朝鮮のロケットだけ、なぜ「事実上の弾道ミサイル」などと言われるのか。

 筆者は北朝鮮の肩を持つわけではありませんが、北朝鮮のロケットだけを「事実上の弾道ミサイル」などと報道するのは「世論を誘導しよう」という悪意を感じます。

 しかし、北朝鮮を悪者呼ばわりし、衛星打ち上げロケットであれ(衛星打ち上げロケットの技術がそのまま弾道ミサイルの技術であることには間違いないのですから)、それを非難したり、妨害しようとするのは、故なきことではありません。北朝鮮が「敵」であることは間違いなく、敵がミサイル技術を向上させることは好ましいことではないからです。

日本が北朝鮮を「国」として認めないワケ


 米国も韓国も、そして日本政府も、北朝鮮を「国家」とは認めていません。米国や韓国にとって、1950年に始まった朝鮮戦争は、まだ終わってはいません。休戦しているだけです。さらに、日本と北朝鮮については、もっと古いいきさつがあります。

 北朝鮮を作った金日成は、第二次大戦よりずっと前、日本が半島を日本領にしていた時代から活動していた反日テロリストでした。もっとも、本物の金日成は日本軍治安部隊との戦いで戦死し、北朝鮮を作った金日成はその名前を襲名しただけではないか、という疑いが濃厚なのですが、ともかく反日テロリストの名を襲名し、戦後も日本人を拉致したりしているのですから、筆者に言わせればテロ国家以外の何者でもありません。

 そんなテロ国家であり、敵国とも言える北朝鮮が「ミサイル技術を向上させ核開発をする」などということがあってはならないのは当然でしょう。

 そこが、他の国が衛星打ち上げロケットを飛ばしても非難されないのに北朝鮮は非難される理由です。とはいえ「事実上の弾道ミサイル」などという報道の仕方は、おかしいとは思いますが。

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ミサイルの科学
現代戦に不可欠な誘導弾の秘密に迫る
かのよしのり 著



かのよしのり
1950年生まれ。自衛隊霞ヶ浦航空学校出身。北部方面隊勤務後、武器補給処技術課研究班勤務。2004年、定年退官。著書に『ミサイルの科学』『拳銃の科学』『重火器の科学』『狙撃の科学』『銃の科学』(サイエンス・アイ新書)、『鉄砲撃って100!』『スナイパー入門』(光人社)、『自衛隊vs中国軍』(宝島社)、『自衛隊89式小銃』『中国軍vs自衛隊』(並木書房)などがある。