ビジネス
2017年4月4日
孫正義のプレゼンが人を魅了する理由
『孫正義 奇跡のプレゼン』より
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数字の見せ方がプレゼンテーションの切れ味を決める


 孫正義のプレゼンテーションは、誰が聞いても内容が理解できる、分かりやすいものである。プレゼンテーションの「メッセージ」は常に明確。そして、のプレゼンテーションには、孫正義の考える「戦略」が強く反映している。この結果、孫正義のプレゼンテーションの全体を貫くロジックは、常にシンプルかつ骨太だ。

 プレゼンテーションのスライドの一枚一枚は、短いメッセージと図や写真などのビジュアルで構成されている。また、孫正義の語り口も対話をするかのように自然で柔らかい。決してメモを棒読みにするようなスタイルではない。誰も退屈で難解な話を長時間好きこのんで聞き続けることはできないのだ。

 そして、孫正義のプレゼンテーションには、数字が非常に多く使われている。しかも、その数字の使い方は、そのプレゼンテーションの「メッセージ」に合うように、工夫が凝らされている。特に、数字の意味を誰もが分かりやすいメッセージに変えることに長けている。

 たとえば、「ソフトバンク新30年ビジョン」でのプレゼンテーションでは、2040年のテクノロジーの進歩について大胆な予想を述べている。

 CPUのトランジスタについては、2010年は30億個だが、2040年には100万倍になり3000兆個になると予想している。また、メモリの容量も2010年は32GBだが、100万倍になり32PB(Pはペタという単位:10の15乗)になると予想している。

 しかし、これらの数字は天文学的にあまりに大き過ぎ、どれだけの進歩なのかがイメージできない。32PBと言っても、誰も具体的には想像することができないだろう。そこで孫正義は、これらの数字を身近な数字に置き換えている。

 孫正義は、3万円端末に保存可能なコンテンツを例にして説明したのだ。

ソフトバンク「新30年ビジョン」プレゼンテーション資料を元に作成(『孫正義 奇跡のプレゼン』p.173より)

 音楽は2010年であれば6400曲だが、2040年では5000億曲を保存することができる。新聞は2010年には4年分だが、2040年では3・5億年分を保存できる。同様に映画であれば、2010年では4時間分しか保存できないが、2040年には3万年分も保存することが可能になるのだ。

 また通信速度についても、2010年では1Gbpsだが、2040年には300万倍になり3Pbpsになると予測している。これも孫正義は分かりやすい例にして説明している。その例は、1秒でダウンロード可能なコンテンツの数だ。

 音楽であれば、2010年にはわずか1曲しかダウンロードできない。しかし、2040年には300万曲をダウンロードできるのだ。また、新聞であれば、2010年には4分の1日分しかダウンロードできないが、2040年には2000年分をダウンロードできるようになる。このように孫正義は、常に数字の分かりやすさを追求しているのだ。

 孫正義のようなプレゼンテーションの達人に、すぐになることは難しいかもしれない。しかし、孫正義の行っているプレゼンテーションのコツの一つ一つは難しいものではない。誰もがすぐに実行することができるものも多い。

 孫正義のプレゼンテーションを意識すれば、誰もが自分のプレゼンテーションを飛躍的にパワフルにすることが可能である。それだけでなく、終わった後にはメッセージを共有し合えた喜び、大きな価値を共感し合えた満足が生まれるだろう。

(了)
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孫正義 奇跡のプレゼン
人を動かす23の法則
三木雄信 著



三木雄信(みき たけのぶ)
1972年福岡生まれ。1998年にソフトバンク株式会社に入社。2000年より同社社長室長となる。Yahoo!BB事業の立ち上げやナスダック・ジャパンの設立、日本債権信用銀行(現あおぞら銀行)の買収案件などにプロジェクト・マネージャーとして関わる。2006年にジャパン・フラッグシップ・プロジェクト株式会社を設立し、現在、同社代表取締役社長兼CEO。ベンチャーから上場企業まで数多くの社外取締役・監査役も務める。日本年金機構(旧社会保険庁)では理事(非常勤)として改革を進めている。政府の委員など多数。東北学院大学経営研究所特別研究員。元厚生労働省大臣政策室政策官。