ビジネス
2017年11月13日
宮崎学×佐藤優「トランプ大統領がつくりだす予測不能な世界」
『「暴走する」世界の正体』より
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最悪のシナリオ――北朝鮮への空爆は日本に飛び火する


 弾道ミサイルによる北朝鮮とアメリカとの応酬は、2017年8月14日に金正恩氏が「米国の様子をもう少し見守る」とし、ミサイル攻撃を留保する発言をした。この発言をトランプ氏は歓迎。16日には自身のツイッターで「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は非常に賢く、非常に筋の通った選択をした。別の選択をすれば、破滅的で容認できない事態になっただろう」と書き込んでいる。このことに対し、宮崎氏と佐藤氏は次のように語っている。

宮崎:ただし、金正恩は「米国が先に正しい選択をして行動で見せなければ、軍事衝突は防げない」旨の発言もしています。韓国との合同軍事演習などで軍備が強化されれば、今後も対立が深まります。北朝鮮側は、核実験を続けるつもりですよね。 佐藤:北の論理からすると、自分たちの安全保障を担保するには、核実験と弾道ミサイル実験を続けて、その延長線上でアメリカとの交渉をやるしかないということなんですから。

 北朝鮮がここまで核実験と弾道ミサイルにこだわるのは、どうしてだろうか。お二人は次のように分析している。

宮崎:北に言わせれば、シリアがやられたのは核を持ってなかったからだという理屈でしょうか?

佐藤:そういうふうに見えるんでしょうね。事実そうですし。シリアが核兵器と弾道ミサイルを持っていたら、アメリカは空爆できなかっただろうと。少なくとも近隣のアメリカ軍基地に対する攻撃能力を持っていれば違っただろうということですね。

 このことを裏付けるかのように、2017年3月に、朝鮮中央通信が初めて在日米軍基地攻撃について報じている。この点について、佐藤氏は次のような事態を懸念している。

佐藤:まずは北への空爆でしょう。北朝鮮では、38度線に合わせて長距離砲をけっこう置いていますから、これを壊さないと、ソウルが火の海になります。この場合、米軍の爆撃機は国内の三沢か嘉手納基地から出すでしょう。北朝鮮は反撃するので、ミサイルが日本にも飛んできます。だからそうなると、危ないのは三沢と嘉手納と、レーダーやアンテナのある市ヶ谷が標的となります。でも、北朝鮮のミサイルの精度は悪いから、狙い撃ちは難しいと思います。そうなると、ちょっとずれてどこへ飛んでくるかということです。あとは、福島第一原発ですね。でも、福島は以前に東日本大震災で壊れていますから、爆撃されて炉の中が拡散したら、パニックが起きるかもしれません。

 まさに最悪のシナリオだが、シリア空爆の件を考えても、トランプ氏が暴走すれば、日本が巻き込まれるのは避けられないかもしれない。トランプ氏は来日時の日米首脳会談後の共同記者会見で、核・ミサイル開発を進める北朝鮮について「看過することはできない。戦略的忍耐の時代は終わった」と表明したが、北朝鮮への空爆を予感させる、といっても大げさとはいいきれないだろう。

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「暴走する」世界の正体
最強論客が読み解く戦争・暴力・革命
宮崎 学・佐藤 優 著



佐藤優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。1985年同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省に入省。在英国、ロシア連邦日本国大使館勤務等を経て、本省国際情報局分析第一課にて主任分析官として、対ロシア外交を担う。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年最高裁で上告棄却、外務省失職。現在、執筆、講演活動に取り組む。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞。『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

宮崎学(みやざき・まなぶ)
1945年京都府生まれ。早稲田大学中退。父は伏見のヤクザ、寺村組組長。早大在学中は学生運動に没頭、共産党系ゲバルト部隊隊長として名を馳せる。週刊誌記者を経て家業の建築解体業を継ぐが倒産。半生を綴った『突破者』(南風社、のちに新潮文庫)で衝撃デビューを果たし、以後、旺盛な執筆活動を続ける。佐藤優氏との共著に『「殺しあう」世界の読み方』(アスコム)、『戦争と革命と暴力』(祥伝社)などがある。