カルチャー
2014年7月4日
キミは"レオパルドン"を知っているか
文・雨野 柊
今年は超合金の生誕40周年ということで、「太陽の塔のロボ」、「ドラえもん」や「コロ助」らが合体する「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」など、ユニークな超合金が続々発表され、注目を集めている。超合金は、第一号機の「マジンガーZ」が1974年に発売され、その後のロボットアニメや特撮作品のキャラクター玩具の一大ブランドとなったが、その中でも異彩を放っている「レオパルドン」をご存じだろうか。
レオパルドンが登場するのは、1978年から1979年に当時の東京12チャンネルで放送された東映版の『スパイダーマン』。米国コミック界を牛耳るマーベルコミックス社と日本の東映が、キャラクター使用契約を交わして製作した特撮シリーズだ。
「三年間は互いのキャラクターを自由に使用できる」という、現在では考えられない太っ腹な契約に基づいて生まれたのが本作で、米国で大人気のスパイダーマンのキャラクターを使用しているが、設定や物語は日本オリジナル。主人公は、スパイダーマンであるにもかかわらず、全高60メートルの巨大ロボット、"レオパルドン"に乗り込んで戦うのだ。 東映ビデオ社のホームページにはこのような作品解説がある。
「CGやワイヤーなど全く無かった時代に、ビルの壁を登り、天井を這う「蜘蛛男」を完璧に再現。その体を張った生身による東映版・スパイダーアクションの数々に、原作者スタン・リー(スパイダーマン・超人ハルク・X‐メン・デアデビル等アメコミ生みの親)も、数ある実写版・スパイダーマンの中で、『日本版スパイダーマンだけは別格だ。レオパルドンは別として...』とコメントを残した程。
しかし、特筆すべき点は「マーベラー」の叫び声と共に登場する巨大変型ロボット"レオパルドン"。
"特撮史上最強秒殺ロボット"とまで謳われるこのレオパルドンこそが、今尚多くのファンの心に焼きつき、ハリウッド版に対しても「『スパイダーマン2』? レオパルドン出ないんだろ?」と言わしめる東映版スパイダーマン最大の魅力なのである」。
このようにレオパルドンは当時から高い人気を誇り、ポピー社(現在のバンダイ)の超合金シリーズとして販売されると、特撮作品の玩具としては未曾有の大ヒットを記録した。
米国のベストセラー小説にも登場するレオパルドン
このレオパルドンが三十数年の時を超えて、米国のベストセラー小説に登場している。タイトルは『READY PLAYER ONE』。日本でも最近翻訳版『(邦題)ゲームウォーズ上・下』が発売されたばかりだ。
物語の舞台は近未来の西暦2041年。革新的なネットワーク〈オアシス〉が張りめぐらされた世界は、深刻なエネルギー危機に陥っていた。多くの人々はそうした現実から逃避するように、〈オアシス〉と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいた。ある日、〈オアシス〉のコンピュータ画面に、突然「ジェームズ・ハリデー死去」のニューステロップが現れる。ジェームズ・ハリデーとは、〈オアシス〉を開発し、運営する世界的億万長者で、ゲーム界のカリスマ的存在だ。テロップに続いて、ハリデーの遺書ともいえるビデオメッセージが現れ、〈オアシス〉内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずることが宣言されたからさあ大変。世界は蜂の巣をつついたような大騒ぎになる...。
この作品は、米国でも空前の大ヒットとなり、米国アマゾンのSF&ファンタジーカテゴリの年間ランキング第一位のほか、米国最大の書店チェーンであるバーンズ&ノーブルでも、SF小説ジャンルで年間ランキング第一位を獲得している(いずれも2011年度)。面白さは保証付きだ。
著者は、自他ともに認める米国の筋金入りのおたく。日本のアニメや特撮にも造詣が深く、本書を読むと、ニッポンカルチャーに対する深い愛情が伝わってくる。
物語のどこにレオパルドンが登場するかは、ネタバレになるので控えるが、レオパルドンのほかにも70年代~80年代の映画、アニメ、ゲーム特撮作品が目白押し。超合金ファン、特撮ファンならずとも、その時代を知る人ならば、思わずニヤリとせずにはいられない。
(了)