カルチャー
2014年8月22日
宇宙の一番星は見えるか?
文・谷口義明
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2014年8月21日、国立天文台、甲南大学、兵庫県立大学、および米国のノートルダム大学とニューメキシコ州立大学の研究者からなる研究チームは、宇宙初期における巨大質量星の痕跡を発見したと発表しました。これに関連して、『4%の宇宙』『重力はなぜ生まれたのか』の翻訳者である谷口義明氏の解説記事を公開します。宇宙初期の最初の星については、『マンガでわかる宇宙「超」入門』(サイエンス・アイ新書)で詳しく解説しています。


宇宙の初期に生まれた巨大質量星の超新星爆発(想像図)。まき散らされた星の痕跡から謎がひもとかれようとしている(提供:国立天文台) ※クリックすると拡大

 私たちが住むこの宇宙に最初の銀河が生まれたのは、巨大なガス雲の中からでした。そしてそれは宇宙の一番星、つまり最初の星が生まれたことと同じ意味をもちます。巨大なガス雲の中でいくつもの星がいっせいに生まれて成長し、それが銀河の誕生となったからです。

 宇宙の一番星がいつ生まれたかは、まだはっきりわかっていませんが、宇宙が誕生してから2、3億年が経過したころだと考えられています。

 宇宙の一番星の特徴は、水素とヘリウムしか含まないガス雲の中で生まれることです。炭素や酸素、鉄などは一切ありません。水素やヘリウムからなるガス雲はなかなか冷えないので、星をつくろうとすると大量のガスが必要になります。そのガスの重力で収縮して星になるからです。

 そのため、最初に生まれたのは太陽の100倍以上の質量をもつ大質量の星だろうと予想されています。

 では、その星は観測できるのでしょうか?

 仮にその星が135億光年彼方にあるとすると、近赤外線(波長2ミクロン程度)で見えますが、その見かけの明るさは40等星になってしまいます。

 1等星の1億分の1の、さらに1億分の1の明るさです。次世代宇宙望遠鏡「JWST」を使っても、これだけ暗ければ見ることができません。

 しかしながら、宇宙の一番星の痕跡を探すことはできます。天の川銀河(銀河系)にある星の中にも、宇宙の一番星の中で合成された元素を含むものがあるはずです。宇宙の一番星は超新星爆発を起こして死んでしまいますが、その際、星の中で合成されたさまざまな元素をまき散らします。宇宙の一番星の場合、鉄がほかの元素に比べて多く放出されるという特徴があります。

 8月21日に発表されたのは、国立天文台が誇る「すばる望遠鏡」がそのような性質をもつ巨大質量星の痕跡を発見したということでした。直接見ることはできないけれど、痕跡を追いかけることで宇宙の一番星の謎に肉薄しつつあるのです。

(了)


マンガでわかる宇宙「超」入門
太陽系から最果てまで宇宙の成り立ちがスッキリわかる!
谷口義明 著



【著者】谷口義明(たにぐちよしあき)
1954年北海道生まれ。東北大学理学部天文学科を卒業後、同大学大学院理学研究科天文学専攻博士課程を修了。理学博士。専門は宇宙物理学。東京大学東京天文台助手、東京大学理学部天文学教育研究センター助手を務め、東北大学大学院理学研究科助教授、愛媛大学大学院理工学研究科教授を経て、2007年11月より愛媛大学宇宙進化研究センター長・教授。東大木曽観測所時代に超新星を発見した。おもな著書に『暗黒宇宙で銀河が生まれる』(サイエンス・アイ新書)、翻訳書に『4%の宇宙』『重力はなぜ生まれたのか』(SBクリエイティブ)のほか、著書、監修書など多数。『マンガでわかる宇宙「超」入門』(サイエンス・アイ新書)は10月刊行予定。
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