カルチャー
2014年9月24日
見過ごすと恐い「子どもの内斜視」
[連載]
『7日間で突然目がよくなる本』より【後編】
文・清水 真
斜視もねこ背が原因の1つ
ところで近年、近視に加えて、子どもたちの間で急速に増えているのが、内斜視です。わかりやすくいうと、「寄り目」の子どもが急増しています。
昔の場合、斜視で多い症状は、外斜視でした。黒目が外側に向いている状態です。
眼球を動かしている脳神経は、全部で12本あります。動眼神経が目を上下に、滑車神経が斜めに、外転神経が外側に、それぞれ眼球を動かしています。
これらの神経の1つが極端に優位になってしまうと、眼球がそちら側に行ったまま戻りづらくなってしまうのです。
外斜視のお子様を持つ親御さんは、切実です。
遠近感をうまくつかめなかったり、物が2つに見えたりする、という日常的な問題だけでなく、左右の目が異なる方を向いてるために、イジメの対象になってしまうこともあるからです。
それだけでなく、人とのコミュニケーションをネガティブに受け止めてしまうことで、精神的に大きな負担を感じる子も少なくありません。
ひと昔前は、外斜視の子どもが多かったので、私の治療院にも、外斜視のお子様を持つ親御さんがたまに来られました。
斜視は遺伝による先天性の症状といわれていますが、私たちの業界では、首の極端な前傾(首ねこ背)に着目し、施術を行います。首から流れている、斜視に関わる神経の流れがよくなるといわれているからです。
あるとき、外斜視に悩む10歳の女の子が、お母様と来院されたことがあります。
その子を見るとやはり首ねこ背の状態だったので、首を丁寧に施術しました。
近視に比べて時間を要しましたが、半年ほどで斜視が改善して、親子で喜ばれていたことを思い出します。
ひと昔前の外斜視に対して、今の子どもたちになぜ内斜視が多くなったかといえば、スマートフォンやタブレットゲームをやることで、目を内側に寄せることが極端に習慣化しているからでしょう。
内側に寄せる神経ばかり使っているため、眼球自体が外側に行きにくくなってしまうのです。
外斜視に対して、内斜視は一見すると、斜視であるとわからない場合も少なくありません。
むしろ、黒目が大きく見えるので、つぶらな瞳に見えたりします。
「かわいい」という理由で、ほとんど放置されているのが現状といえるでしょう。
しかしながら、じつは内斜視になると、日常生活に支障をきたしてしまいます。
具体的に何が起こるかというと、黒目が内側に寄っているため、視野が極端に狭くなってしまうのです。
たとえば、ボールを使って遊んでいる最中に、横からボールが飛んできても見えなかったり、ボールに気づかずぶつかってしまったり──。こうした事例がじつに多くなっています。
私はスポーツトレーナーの仕事も精力的に行っているため、若いアスリートを指導する機会も少なくありません。
あるとき、女子サッカーの強豪校で知られる高校に指導で入りました。
サッカーのことをご存じであればおわかりのとおり、練習や試合中、ボールが横から飛んでくることが往々にしてあります。
ところが生徒たちを見ていると、横から飛んでくるボールが見えないようで、反応がとても鈍い。ひと昔前なら当たり前にできていたプレーが、今の子どもたちはできにくくなっているのです。
内斜視の子どもがいかに増えているか、ひどく痛感した出来事でした。
また、内斜視は眼球の動きに極端な偏りがあるため、視野狭窄だけでなく、根本的な視力の低下にもつながります。
実際、内斜視のお子様の場合、「目が見えにくくなった」とか「視野が狭くなった」という理由で来院されることが多く、内斜視自体が来院理由になることはほとんどありません。内斜視であることがわかっていない状態です。
しかし、お子様の姿勢を見てみると、首ねこ背になっていて、内斜視ぎみになっているのがわかるのです。
ときどき、私の講演に、お孫さんを連れて来られる方がいます。
その方々が、口を揃えて、こんなふうに言うのです。
「うちの孫は、黒目が多いので、目が大きく見えるんですよ」と。
そのとき私は「それは、内斜視の可能性があります」と、必ず伝えるようにしています。
なぜならば、眼科で内斜視と診断されず、そのまま放置して1つの神経を使い続けながら成長していくことになれば、大人になってから本格的な内斜視になる場合もあるからです。
斜視の手術に安全性の問題はない、といわれていますが、稀に手術後、合併症を発症することもあります。親御さんにとっては、やはり勇気のいる選択でしょう。
ですから、やはり大切なのは、根本的な原因を知り、早い段階で適切なケアをすることなのです。
(了)
【著者】清水 真(しみず まこと)
1973年北海道生まれ。(株)NaturalHands。一般社団法人姿勢道普及協会理事長。姿勢教育指導士、日本スポーツクラブ協会認定マスターインストラクター、中高老年期運動指導師。2001年より北海道札幌市内を中心に整体院、整骨院、鍼灸院を展開。「姿勢の専門家」として過去12万人の姿勢矯正を行ってきた経験から、姿勢の悪さと視力、痛み、肥満など身体的な不調、また自律神経失調症など精神的な症状との関連を実感。講演活動や各種セミナー、テレビ、ラジオ等を通じて「姿勢の大切さ」の啓蒙にあたっている。著書に『ねこ背は「10秒」で治る!身長が伸びる、やせる! 背伸ばし体操』『大人でも身長が伸びる!やせる! 背伸ばし体操』(共に講談社)がある。
1973年北海道生まれ。(株)NaturalHands。一般社団法人姿勢道普及協会理事長。姿勢教育指導士、日本スポーツクラブ協会認定マスターインストラクター、中高老年期運動指導師。2001年より北海道札幌市内を中心に整体院、整骨院、鍼灸院を展開。「姿勢の専門家」として過去12万人の姿勢矯正を行ってきた経験から、姿勢の悪さと視力、痛み、肥満など身体的な不調、また自律神経失調症など精神的な症状との関連を実感。講演活動や各種セミナー、テレビ、ラジオ等を通じて「姿勢の大切さ」の啓蒙にあたっている。著書に『ねこ背は「10秒」で治る!身長が伸びる、やせる! 背伸ばし体操』『大人でも身長が伸びる!やせる! 背伸ばし体操』(共に講談社)がある。