カルチャー
2015年3月6日
今日から見習いたい! ネコから学ぶ処世術
文・壱岐田鶴子
「やるときはやるニャー」──オンとオフを切り替える
ネコは、1日のおよそ3分の2を休息したり、眠ったりする時間に費やします。リラックスタイムや休息に十分な時間を取り、狩りに必要なエネルギーを蓄えているのです。
ネコが獲物を見つければ、ほとんど動かずに(尻尾の先だけは動いていますが)固まって、獲物をめがけて跳びかかるチャンスを辛坊強く待ちます。驚くべき忍耐力と集中力を持ち合わせているのです。
いつもゴロゴロしているように見える飼いネコも、獲物(それが虫であっても)が視界に入れば、その目はハンターの鋭い目に早変わり。狩りはいつも成功するとはかぎりませんが、たとえ失敗しても、ネコはクヨクヨして落ち込んだりせず、次の機会に備えます。
私たちも、仕事を充実させるためには「やるときはやる」とオンとオフをうまく切り替え、仕事とプライベートの時間を両方楽しみたいものです。休息したり、リラックスする時間を十分に取ってリフレッシュ、そして、ネコを見習い、チャレンジに失敗しても、成功につなげる次のステップとして捉えて前進したいですね。
「自分で治すニャー」──自然治癒力、癒し力
ネコがゴロゴロとのどを鳴らすのは、なにも気分のいいときだけではありません。病気やケガをしているときもゴロゴロ音を発することがあり、気持ちを静めたり、痛みをやわらげたり、骨や筋肉の治癒を促進する効果もあることが明らかになっています。
先日も、米・フロリダ州で車にひかれて(死亡したと思われ)埋葬されたネコが、その5日後、大きな傷を負いながらも飼い主のもとに戻ってきた、というニュースが話題になりました。その生命力には驚嘆させられます。
私たちも、ネコのゴロゴロの恩恵をこうむることができます。ゴロゴロ音を発するネコに触れると、ストレス緩和や安眠効果、血圧を下げたり、慢性の痛みをやわらげる効果があることがわかっています。ネコは人の気持ちを敏感に感じ取り、私たちの気分がすぐれないときや落ち込んでいるときは、いつの間にかそばにやってきて元気づけてくれます。ただただ黙って話を聞いてくれ、いるだけで癒してくれる不思議な力を持ち合わせています。
私たちがこの癒し能力を見習うことは到底無理ですが、このネコの癒し力を十分に活用させてもらい、明日への活力にしたいものです。
ネコの気持ちがわかる「ネコ好き人間」は、さりげなく相手を引き寄せる力を備えているので、恋愛、仕事、人間関係などをひっくるめて、人生において成功する可能性が高くなるのではないでしょうか? ネコの生態や行動を知ることは、生きるためのヒントを知ることでもあるのです。
(了)
【著者】壱岐田鶴子
獣医師。神戸大学農学部卒業後、航空会社勤務などを経て渡独。2003年、ミュンヘン大学獣医学部卒業。2005年、同大学獣医学部にて博士号取得。その後、同大学獣医学部動物行動学科に研究員として勤務。動物の行動治療学の研修をしながら、おもにネコのストレスホルモンと行動について研究する。2011年から、小動物の問題行動治療を専門分野とする獣医師として開業。おもな著書は『ネコの気持ちがわかる89の秘訣』『ネコの「困った!」を解決する』(サイエンス・アイ新書)。
獣医師。神戸大学農学部卒業後、航空会社勤務などを経て渡独。2003年、ミュンヘン大学獣医学部卒業。2005年、同大学獣医学部にて博士号取得。その後、同大学獣医学部動物行動学科に研究員として勤務。動物の行動治療学の研修をしながら、おもにネコのストレスホルモンと行動について研究する。2011年から、小動物の問題行動治療を専門分野とする獣医師として開業。おもな著書は『ネコの気持ちがわかる89の秘訣』『ネコの「困った!」を解決する』(サイエンス・アイ新書)。