スキルアップ
2015年4月20日
やたらに暗算が速い人は、なぜ頭の中で高速計算ができるのか?
文・涌井良幸
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数字のちょっとした特性を見抜くのがコツ


 学校で教わった算数や数学はきわめてオーソドックスなものである。そのため万能ではあるが、実際の計算に直面すると、なぜかうまくいかなかったり、時間がかかったりすることがある。たとえば、次の計算はどうだろうか?

  398×402

 もちろん、多くの人は「なに、簡単さ!!」といって、小学校で教わった縦書きの掛け算(筆算)に書き換えて、次のように答えを出すことだろう。

      398
  X   402
  ───────
      796
     000
   1592
  ───────
   159996

 だが、これだと何回も掛け算を行うため時間がかかる。それに、繰り上がりがたくさんあるので計算ミスも心配である。こんなときは、ちょっと頭を柔らかくすれば、

  16000-4=159996

と、簡単に答えを導くことができる。これなら暗算も可能である。これは、

  398=400-2
  402=400+2

という具合に、400に2足りない数字、400より2多い数字である点に注目し、

   398×402
  =(400-2)×(400+2)
  =(400の2乗)-(2の2乗)

と考えるわけだ。

速算をマスターすると、本質を見抜く力が身につく!


 もう1つ例を挙げてみよう。次の計算はどうだろうか?

  164×0.75

 この計算も、先の例のように正攻法で考えれば、筆算で答えを求めることになる。しかし、次のように分数に変換してから計算すれば、暗算でもすぐに答えが出てしまう。

   164×0.75
  =164×3/4
  =164÷4×3
  =41×3
  =123

小学校で教わった足し算、引き算、掛け算、割り算の計算法は万能薬。個々の計算の特性に応じて最適なテクニックを駆使する速算の技術は特効薬だ

 このように、問題に直面したときは、なにがなんでも学校で教わった正攻法で攻めるのではなく、臨機応変に、個々の計算の特性に合った計算法で攻めるのが大事なのである。そして、このことがまさしく「速算の技術」なのであり、この臨機応変の精神は、我々の柔軟な思考力をいろいろな面で増進させることにもなる。

 また、こうした速算の技術だけでなく、「概算」や「検算」にも、手早く行える技術もある。こうした技術では、細かいことは抜きにして、本質的な部分を即座に見抜くことがポイントだ。したがって、すばやく概算しようとすると、瞬時に物事の本質を見抜く必要に迫られる。この心がけは、計算のみならず生活や仕事においても生きる。人に先んじて数量的な本質を見抜く力は、あなたが生きていくうえで有効な武器となる。

 4月刊行の『図解・速算の技術』では、こうしたテクニック解説していると共に、速算につながるいろいろな算術の知恵や、知っていると人生がおもしろくなる数の知恵を紹介している。興味のある方は、ぜひ読んでいただけると幸いだ。

(了)


図解・速算の技術
一瞬で正確に計算するための極意
涌井良幸 著



涌井良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)理学部数学科を卒業後、教職に就く。現在、高校の数学教師を務めるかたわら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。主な著書(共著)に『道具としてのフーリエ解析』『道具としてのベイズ統計』(日本実業出版社)、『数的センスを磨く超速算術』(実務教育出版)、『身のまわりのモノの技術』(中経出版)などがある。
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