スキルアップ
2015年4月22日
プロのコンサルタントはどんなノートを使っているのか?
文・大嶋 祥誉
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「マッキンゼーのコンサルタントはどんなノートをどんなふうに使っているんですか?」という質問をよくされます。

 マッキンゼー流ノート術の基本は、問題解決のため。だからこそ、コンサルタントはおのおの、問題解決のスピードとクオリティを最大化させることができる使い勝手のいいノートで、独自に最適化した使い方をしていました。

「どんなノートをどのように使えば、もっとも速く、クオリティの高い問題解決ができるのか?」

 この問いの答えは、コンサルタントの数だけあるというのが正解かもしれません。

 しかし、多くの優秀な先輩や同期のノートの使い方から、そこには結果を出すために外せない一定のノート使い方の法則があったのも事実。

 私が執筆した『マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか』でも詳しく紹介していますが、マッキンゼーの多くのコンサルタントは3種類のノートを使い分けていました。

 情報収集やヒアリングには「ケンブリッジノート(罫線ノート)」を使い、それらの情報や他のデータを使って思考を整理したり、分析の仕方を考えたりするときには「方眼ノート」で手を動かします。

 そして、アウトプットを作成するときには「マッキンノート」を使うという具合です。

 ルール化されているわけでもないのに、そのように一定のノート使いの法則があるというのは、そこに問題解決のためのノート術の鍵があるとも言えます。

 そして、何冊のノートを日常的に使っているかという点では「ノート1冊派」と「ノート2冊派」に分かれます。

【ノート1冊派】罫線ノート vs 方眼ノート


 私は、コクヨのドット入り罫線のB5判キャンパスノートを愛用。現在はグローバル企業でリーダーとして活躍している同期の一人はB5判ツバメノートを愛用しています。

 彼は今も、このノートをベースにすべてを書き記しています。なぜツバメノートを選んだのかと聞くと、過去のノートはすべて保存する派なので、今後もなくならないであろうロングセラーのノートはどれか? という視点で選んでいるといいます。

 表紙に使い始めた日付を入れて、あとで見返すときの検索機能として、日付を目印に使っているそうです。

【ノート2冊派】1冊+メモ帳 vs 罫線ノート+方眼ノート


 マッキンゼーの先輩の一人、炭谷俊樹さんは小さいメモ帳と方眼ノートを愛用。思いついたアイデアをその小さいメモ帳にどんどん書いていきます。そして、メモの内容をもとに思考を展開したり整理するときには、手触りのいいノートを使用していると言います。

 なぜ「手触り感」が大事なのかというと、手触りのよさが脳に刺激を与えてくれることで発想が促進されるからだとか。さらに、ずっと同じノートを使わず、そのときの感覚で別の色の表紙のノートを使ったりするそうです。

 新しい色のノートを使うことで五感が刺激され、クリエイティブな仕事をするマインドが高まるのです。

 また、ある先輩はブロックメモで有名な「RHODIA」のメモ帳を愛用しています。思いついたことはここにメモ。そして、打ち合わせやプランニングをするときにはA4判の罫線ノートを使っています。必要があれば、「RHODIA」のメモ帳をチェックしながら、プランニングするのです。

 メモにも重要な箇所や何回も見る箇所には付箋を張っておきます。なぜなら、使用頻度が多いので、すぐに検索できるようにしておきたいからです。

 ここで取り上げたのは、ノートの使い方の、ほんの一例です。皆さんは、どのタイプのノートの使い方が当てはまるでしょうか。最初から「これが正解」というものは見つからなくても、いろいろなノートの使い方を自ら試して、しっくりくるノートとその使い方を見つけることが大事です。

 誰かに言われたから、メディアで紹介されていたからということで選ぶのではなく、自分にとっていちばんいいノートの使い方とはどんなものか? という自問をしてみてください。

 実際にノートを使って手を動かしながら、その答えを自分で見つけていく知的な作業こそがノート術の神髄なのですから。

【番外編】成功を目指すための質問リストノートをつくる


 もし、皆さんが「将来、自分で何かビジネスを起こして成功したい」「専門分野で業績を残したい」ということを考えていたら、何が成功の秘訣になるのか? ということが明確になるような「質問リスト」を持っておくといいかもしれません。
 例えば、

Q 成功するためにいちばん大切にしていることは?
Q 将来の夢は?
Q なぜその夢を実現したいのか?
Q 夢の実現のためにどんなことをやっているか?
Q 毎日どんなことを習慣にしているか?
Q 朝は早く起きているか?
Q 週末や休日はどんなふうに過ごしているか?

といった成功のための行動や姿勢といった秘訣を引き出すような質問リストノートをつくっておきます。

 この同じ質問リストを、皆さんが出会う「目標達成した人」「結果を出している人」にどんどん聞いていくことで定量・定性のデータを蓄積していくのです。

 仮に、1000人に同じ質問をしてその答えを蓄積しておくと、「成功者には、こんな共通点があった」「これが成功のイシューなのではないか?」というような深い洞察や気づきを得ることができるはずです。

 それらをまとめれば、貴重な情報ソースになり、ブログやFacebookでサマリー化して発信したり、出版のネタになる可能性もあります。

 とくに外部の人との接触やヒアリングなどの仕事の多い人は、自分の関心のあるテーマについての質問リストノートをつくることをお勧めします。

(了)


マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか
トップコンサルタントの考える技術・書く技術
大嶋 祥誉 著



大嶋祥誉(おおしま さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。エグゼクティブ・コーチ、組織開発・人材育成コンサルタント。上智大学外国語学部卒業。米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。米国シカゴ大学大学院人文科学学科修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、新規事業のフィージビリティスタディ、全社戦略立案、営業戦略立案などのコンサルティングプロジェクトに従事。その後、ウイリアム・エム・マーサー、ワトソンワイアット、グローバル・ベンチャー・キャピタル、三和総合研究所にて、経営戦略や人材マネジメントへのコンサルティングおよびベンチャー企業支援に携わる。2002年より独立し、エグゼクティブ・コーチング、組織変革コンサルティング、チームビルディングやリーダー開発に従事する。著書に『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』『マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書』(SBクリエイティブ)がある。
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