スキルアップ
2015年5月12日
一瞬でお釣りを計算するときに使う「補数」とは?
文・涌井良幸
速算で大活躍する「補数」とは?
買い物をする際に、千円札や1万円札で支払ってお釣りをもらうことはよくある。その際、一の位から十の位、百の位へと計算していったら大変だ。
計算をテキパキとすばやく処理できる人、つまり、速算できる人は、暗算をする際に左から右、つまり上の位から計算をしていく。
こうした速算の際には、補数が大活躍するので覚えておきたい。
数学における補数の厳密な定義はややこしいので、ここでは補数を次の意味で使うことにする。
「aのcに対する補数bとは、a+b=cを満たすb」
そして、このcを基準数と呼ぶ。速算では基準数は10、100、1000などのキリのいい数を採用することが多い。
ちょっと回りくどい言い方だが、具体例でいうと次のようになる。
(1)「9」の10に対する補数は、9+1=10より「1」
(2)「2」の100に対する補数は、2+98=100より「98」
(3)「995」の1000に対する補数は、995+5=1000より「5」
この例でわかるように、aとbは基準数cに対して互いに補数なのである。
(1)では「10に対する9の補数は1」、また「10に対する1の補数は9」ともいえる。
ここで注意したいことがある。それは、基準数より大きな数についても補数を考えるということである。
「aのcに対する補数bとは、a+b=cを満たすb」
のことだから、たとえば、「11」の10に対する補数は11+(-1)=10より、「-1」ということになる。
「補数がマイナスの数になる」というのは、ちょっと違和感があるかもしれないが、慣れればなんでもない。元の数がキリのいい数(「キリ数」と名付けます)より大きいために、マイナスする必要が出てきたのだ。ほかにも例を挙げておこう。
(4)「12」の10に対する補数は、12+(-2)=10より「-2」
(5)105の100に対する補数は、105+(-5)=100より「-5」
(6)1013 の1000 に対する補数は、1013+(-13)=1000より「-13」
なお、キリのよい10、100、1000、10000、...以外にも、場合によっては別の数を「キリ数」として利用することもある。
例)「48」の50に対する補数は、48+2=50より「2」
補数を使って釣り銭を計算する
さて、冒頭で述べた買い物のときのお釣りだが、たとえば1000円の釣り銭であれば、1000に対する補数を求めればよいことになる。
補数を求め方は簡単だ。たとえば1000に対する738の補数を求めるには、図のように、
「各位の9に対する補数(9との差)を列挙してできた数に1を足す」
だけでよい。言い方を変えれば、
「各位の9に対する補数を列挙する。ただし、一の位については10に対する補数とする」
としてもよい。
そして、暗算をする際には、上位の位から補数を求めていく。
百の位→7に対する9の補数は「2」
十の位→3に対する9の補数は「6」
一の位→8に対する10の補数は「2」
よって、お釣りは「262」円といった具合だ。
(了)
【著者】涌井良幸(わくいよしゆき)
1950年、東京生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)理学部数学科を卒業後、教職に就く。現在、高校の数学教師を務めるかたわら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行っている。主な著書(共著)に『道具としてのフーリエ解析』『道具としてのベイズ統計』(日本実業出版社)、『数的センスを磨く超速算術』(実務教育出版)、『身の周りのモノの技術』(中経出版)などがある。近著は『図解・速算の技術』(サイエンス・アイ新書)。
1950年、東京生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)理学部数学科を卒業後、教職に就く。現在、高校の数学教師を務めるかたわら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行っている。主な著書(共著)に『道具としてのフーリエ解析』『道具としてのベイズ統計』(日本実業出版社)、『数的センスを磨く超速算術』(実務教育出版)、『身の周りのモノの技術』(中経出版)などがある。近著は『図解・速算の技術』(サイエンス・アイ新書)。