スキルアップ
2015年8月19日
Webサイト制作を成功させるコツ──サイト制作は「ビジョン・ファースト」で進めよう
文・高田 信宏
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ビジョンに合ったキーワードは、自身自身で選出しよう ~SEO業者に任せっきりにしないこと~


 クライアントにとっては、本当にそのキーワードが集客に使うべき言葉であるのか、その判断を最終的に委ねられても困ってしまうでしょう。

 ただ、それを専門のWeb制作会社が自分たちだけで正しく判断できるのかというと、そうは絶対にあり得ません。

 もともとクライアント企業のことをあまり知らずに、クライアント企業の属性にのみ焦点を絞ったビッグキーワードを提案してしまうことほど恐ろしいことはありません。筆者は少なからずそれを経験してきました。

 さきほどの歯科医院の場合を例にすると、第一の作業は、病院のビジョンやコンセプトを打ち立てることです。

 そしてコンテンツを作り上げ、そのコンテンツからキーワードが洗い出されていきます。

 インプラントに特化したサイトであれば、「インプラウントに専門性が高く、他よりもはるかに信頼がある」、駅に近い、お待たせしないといった点を打ち出したいサイトであれば、「虫歯の治療に向かいやすい」「子連れのお母さんにとって待ち時間の負担が少ない」といった、求めるユーザーが手にするメリットを軸に医院のビジョンを打ち立て、そこからキーワードが選ばれるべきです。

 「新宿 歯医者」でSEOで上位表示させれば、確かに集客率は高まります。

 ですが、このキーワードに対してSEO施策をお願いすると、(ビッグキーワードゆえに)予算はそれなりにかかります。その反面、効果は期待できません。

 本当にそのキーワードが、歯科医院のビジョンにつががるものなのか。企業自身とユーザーを結びつけ歯科医院としての成長を促すものかは、Web担当者自身がジャッジしなければなりません。

 業界の専門家が正しく判断できるのは、SEOの行い方やコンテンツの作り方に対してです。そもそも「キーワードを決めてもらう」ということは、自社の成長を他社の判断に任せるとも言える、危険な判断です。さらに、専門家に一からの提案をお任せすると、費用が高くつきます。そこにデザインを含めると、中小企業では失敗が許されない額になります。

 いま一度、専門のWeb制作業者から出されたその提案は本当に良いものなのか、もう一度考えてみてください。Web担当者自身にその判断が求められる。そんな時代に来ています。

 必要なものを適正なコストで作る。そのためには第一にビジョンを描き、ビジョン・ファーストでコンセプトを作り、キーワードを洗い出すことが重要です。コスト削減のためにデザイン費用を多少抑えてでも、上記セオリーに則れば、単にお任せの制作物以上のサイトが必ず仕上がります。

 「まずはビジョンを打ち立て、そのうえで制作作業に入る」こと。

 コストを最低限に抑えながら効果の高いWebサイトを作り上げるコツは、ここにあります。

(了)


デザイナーのためのプロの制作術が身につく Webディレクションの教科書
NPO法人クリエイター育成協会 高田 信宏、池田 真知子、松野尾 絢三、藤井 梨恵、前田 絵里 著



【著者】高田 信宏(たかだ のぶひろ)
NPO法人クリエイター育成協会(http://cra.jp/)理事/東京マネージャー、ワットエバーロング株式会社(http://whateverlong.co.jp/)代表取締役社長。Webディレクター、Webデザイナーからの転職を経て、Webマーケティング企業に入社しSEOディレクターとして活動後、教育企業に転身。Webマスター兼講師として各種サイトの運営管理を行う傍ら、講義やセミナーを通し、デザインとマーケティングの両極からの視点を伝える教育に励む。また、一般社団法人ICT国際教育機構にて、全国アイシテック実力試験の立ち上げに参画。30歳を区切りにフリーランスへシフト。その中でクリエイター育成協会に出会い、理事および東京マネージャーとして現在活動中。2013年、一般社団法人日本Webソリューションデザイン協会(現Web協会)にて講座開発、2014年、株式会社アイデムとWeb/ITスクールを設立、2015年4月より株式会社クラウドワークスと本スクールの設立など、Web教育を通じて雇用機会を促進するための場を整備している。
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