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2015年10月10日
「安保法案」は「憲法違反」って、どういうこと? 池上さんに聞いてみよう!
文・池上彰+「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ
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解釈は日常的に行われている


図2 とらえ方は様々

 憲法を解釈することは、実は日常的に行われています。たとえば国会で新しい法律を作るときに、憲法に反していないかどうか、あるいは憲法の趣旨を反映した法律かどうかということを、いつも憲法の解釈をしながら法案が提出されていますし、裁判所も裁判では憲法を解釈するということを続けてきました。

 たとえて言えば、こういうことです。

 食堂で「ご飯を大盛りにして」と頼んだとき、同じ大盛りでも人によってとらえ方は様々。つまり、解釈によって結果は変わるのです。

「できない」を「できる」に変えていいの?


 ところが今回、なぜ大きなニュースになったかというと、歴代の内閣が「集団的自衛権は憲法9条に違反するからこれは使えないんだよ」とずっと言ってきたのが、突然、「いや、これは解釈を変えて使えるんですよ」と言った。内閣が突然、これまでの内閣が積み上げてきたものを一挙にひっくり返してしまった。「それって憲法を独自に変えたことと同じじゃないか?」という疑問が出ますよね。

 解釈改憲と言いますけど、憲法に違反するとこれまで言ってきたのなら、憲法を変えればいいのに、解釈を変えることによって「できない」を「できる」に変えるのはおかしいじゃないか。こういう議論が起きたのです。

 その一方で、内閣にしてみれば、「いや、内閣は日々憲法を解釈しているのだから、その解釈の一環としてこれを変える。それはいいんだ」という言い方をした。その結果、これが大きな議論になったということです。

憲法改正が大きな政治課題に


 日本国憲法ができて以来、憲法が変わったことは一度もありません。しかし、日本以外の国では随分変わっています。特にヨーロッパの場合、EU全体のルールに合わせて、それぞれの国が憲法を変えてきたということはかなりあります。

 今後は憲法改正が大きな政治課題として出てくるでしょう。その時に私たちはそれに対してどういう考え方を持つべきかということを、これから考えていく必要があるのではないでしょうか。

 憲法はその国のかたちを決めるものです。日本という国のかたちはどうあるべきか。そのことをよく考えて憲法のことを考える。それが大切なことだと思います。


◆本記事は、テレビ朝日系列で毎週土曜よる7時54分から放送中の「池上彰のニュース そうだったのか!!」の2015年6月6日放送分等を構成し、編集・加筆したものです。9月刊行の『池上彰のニュース そうだったのか!! 1』(SBクリエイティブ刊)では、憲法と法律について、より詳しい解説を掲載しているほか、日本にまつわる数々の疑問を、池上さんが分かりやすく説き明かしています。



池上彰のニュース そうだったのか!! 1
日本人なら知っておきたい「実はみんな知らない日本」
池上彰+「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ 著



【著者】池上彰(いけがみ・あきら)
1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、NHKに記者として入局。さまざまな事件、災害、教育問題、消費者問題などを担当する。科学・文化部記者を経て、NHK報道局記者主幹に。1994年4月から11年間にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。わかりやすく丁寧な解説に子どもだけでなく大人まで幅広い人気を得る。2005年3月にNHKを退職したのを機に、フリーランスのジャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活動。2012年2月、東京工業大学リベラルアーツセンター教授に就任。おもな著書に『伝える力』シリーズ(PHP新書)、『そうだったのか!現代史』他、「そうだったのか!」シリーズ(集英社)、『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズ(角川SSC新書)、『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』シリーズ、『ここがポイント!! 池上彰解説塾』シリーズ(海竜社)、『池上彰教授の東工大講義』シリーズ(文藝春秋)など、ベストセラー多数。

【番組紹介】「池上彰のニュース そうだったのか!!」
最近大きな話題となっているニュースの数々、そして今さら「知らない」とは恥ずかしくて言えないニュースの数々を池上彰が基礎から分かりやすく解説します!ニュースに詳しい方も、普段はニュースなんて見ない、という方も「そうだったのか!」という発見が生まれます。土曜の夜はニュースについて、家族そろって学んでみませんか?

◆テレビ朝日系列全国ネット 毎週土曜よる7時54分放送中
◆ニュース解説:池上彰
◆進行:宇賀なつみ(テレビ朝日アナウンサー)
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