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2015年10月7日
世紀の発見!「ニュートリノ」に質量があると何がスゴイのか
文・荒舩良孝、監修・大栗博司
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ニュートリノの重さを発見したスーパーカミオカンデ


ニュートリノの重さを発見したスーパーカミオカンデ

 ニュートリノの重さを発見したのは、岐阜県の神岡鉱山につくられたスーパーカミオカンデだった。この装置は、1987年に超新星爆発で発生したニュートリノをとらえることに成功したカミオカンデの後継機である。貯水容量もカミオカンデの3000トンから5万トンへと約17倍も増え、観測精度を上げている。

 標準模型では、ニュートリノには重さがないということになっていたが、本当にそうなのかと確かめる試みはこれまでも数多く行われていた。ニュートリノは超新星以外にも、太陽や大気、地球の内部など、いろいろなところで発生しているが、弱い力だけとしか反応しないので、とらえるのが難しかった。

 スーパーカミオカンデの実験では、大気で発生したニュートリノを観測していたところ、北半球で発生した空からやってくるニュートリノと、南半球で発生して地下を突き抜けてくるニュートリノの量を比べたところ、地下からくるニュートリノのほうが量が少ないことがわかった。

 ニュートリノは、地球の存在には影響を受けないはずである。それなら、地球があろうがなかろうが同じ量やってこないといけないはずなのに、なぜこのような違いが起きるのだろうか。この現象をもっとよく調べてみたところ、ニュートリノの種類が変化していたのだ。この実験では、3種類あるニュートリノのうちミューニュートリノを観測しようとしていた。

 しかもこのニュートリノは、発生してからスーパーカミオカンデに飛んでくるまでの間に、タウニュートリノに変わってはミューニュートリノに戻るニュートリノ振動というものを繰り返していた。それで観測したときには、ちょうど半分くらいしかミューニュートリノが観測できなかったのだ。このニュートリノ振動の観測によって、ニュートリノに重さがあることがわかってきた。



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なぜ究極の理論とよばれるのか
荒舩良孝 著  大栗博司 監修



著者:荒舩良孝
1973年生まれ。科学ライター・保育士。東京理科大学在学中より科学ライター活動を始める。ニホンオオカミから宇宙論まで、幅広い分野で取材・執筆活動を行っている。おもな著書に、サイエンス・アイ新書『宇宙の新常識100』がある。

監修:大栗博司
1962年生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学大学院修士課程修了。東京大学理学博士。プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを経て、カリフォルニア工科大学 理論物理学研究所所長およびフレッド・カブリ冠教授、東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。おもな著書に、『大栗先生の超弦理論入門』(講談社ブルーバックス)、『重力とは何か』『強い力と弱い力』(幻冬舎新書)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)などがある。
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