カルチャー
2016年4月6日
薬剤師が教える「ロキソニン」の副作用、本当の怖さ
文・宇多川 久美子
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怖い副作用とは――


 市販薬は大衆薬などとも呼ばれますが、正式には「一般用医薬品」といいます。
 これに対し、医師が出す処方薬は「医療用医薬品」といいます。

 最近では、市販薬はOTC薬とも呼ばれるようになりました。英語の「Over Th eCounter」の略語です。直訳すれば「カウンター越しにもらう薬」という意味になるでしょう。しかし実際には市販薬は、街のドラッグストアの棚にズラリと並べられて、まるでお菓子を選ぶように、気軽に自由に買えるようになっています。

 「処方薬=効き目が強い」「市販薬=効果が穏やか」だから、市販薬は副作用がほとんどない、と思っている人もいます。
 これは大間違いです。

 たしかに市販薬は、処方薬に比べて作用の穏やかなものが多く見られます。
 副作用のリスクを避けるために、処方薬に比べて主成分の量を半分から3分の1程度に減らしている薬が少なくないからです。ただし、主成分そのものは処方薬と変わりません。処方薬に副作用があって、市販薬に副作用がない、にはならないのです。実際に、市販薬を服用して亡くなる方、重度の副作用を被ってしまう方は、毎年います。

 市販薬を服用している人の数を考えれば、実際の副作用による死亡者数はもっと多くなるでしょう。市販薬の服用後に呼吸障害を起こして突然死してしまったとしても、家族が市販薬の服用を把握していなければ、死因が市販薬の副作用だとは誰も気づけません。

 これは死亡例に限ったことではありません。

 たとえば、風邪をきっかけにギラン・バレー症候群になる人がいます。ギラン・バレー症候群は、運動神経に障害を起こし、手足に力が入らなくなる病気で、強いしびれをともないます。風邪が原因だと考えている患者さんの中には、本当は「風邪薬」の副作用だったという人がいるはずです。

 私はむしろ、市販薬の服用にこそ注意すべきだと考えています。処方薬はあなたの体調に沿った医師による「オーダーメイド」のはずですし、薬の受け渡しの際、副作用に関する説明を受けます。

 しかし、市販薬はそうではありません。たとえば、風邪で購入する薬は、総合感冒薬と記載されています。総合感冒薬には、咳やくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛みなど、風邪の症状をひととおり抑える薬が1錠の中に混合されています。その中には、自分の身体に適さない成分もあるかもしれません。それによって副作用が生じたとしても、薬の説明書を読まなければ、気づくことさえできないのです。

「用法・用量を守っていれば安全」ではない


 市販薬は「用法・用量を守っていれば安全」とは考えないでください。その人の薬の感受性によって、表に出る副作用の度合いは違います。同じ人であっても、そのときの体調によって異なります。人の身体とは、何かの拍子で体内環境をガラリと変えてしまうほど繊細なものなのです。

 今、一部の市販薬はインターネットでも購入できるようになりました。

 厚生労働省と財務省は、市販薬を年間一万円以上買う世帯の税負担を軽くする制度を、2016年度の税制改正要望に盛り込むという報道もされています。市販薬の服用を国が推し進める危険性に、私は憤りを感じずにいられません。国は国民の命を第一に守るという意識が欠落しているように感じます。

 だからこそ、私たち自身がしっかり知識をつけなければいけません。まずは「市販薬は安全」という幻想を捨ててください。

(了)


その「1錠」が脳をダメにする
薬剤師が教える 薬の害がわかる本
宇多川 久美子 著



宇多川 久美子(うだがわくみこ)
一般社団法人国際感食協会理事長 有限会社ユアケー代表取締役 ハッピーウォーク主宰
明治薬科大学卒業。「薬を使わない薬剤師」を目指して、 食べること、歩くことの大切さを多くの方に伝えるため、各地で 「アンチエイジングセミナー」 「メタボ対策セミナー」を開催。 「感食ドクターKUMIKA」として ダイエットコンサルタントも手がけ、『Dr.KUMIKAのいただきますダイエット』を刊行。綺麗に食べ、綺麗に笑い、綺麗に歩く『KUMIKA式・感食アンチエイジング法』を提唱。10万部を突破した、『薬剤師は薬を飲まない』 (廣済堂出版)『薬が病気をつくる』(あさ出版)など著作多数。薬の危険を啓蒙する著作も話題を呼んでいる。
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