ビジネス
2016年8月3日
Pepperでプログラマーのパラダイムシフトが起こる!
~ソフトバンクロボティクス「UXデザインワークショップ」レポート
7月14日(木)、東京新宿で、ソフトバンクロボティクス主催のPepper開発者向けワークショップ「UXデザインワークショップ」が、開催された。登壇者は劇作家で演出家、東京藝術大学特任教授の平田オリザさんと、同大学ロボティシスト・特任研究員の力石武信さん。ロボット演劇との数年にわたる取り組みで生まれた研究成果から、ワークショップ形式で制作のノウハウを伝えるという内容に、30名の参加者たちが2時間にわたりレクチャーを受けた。その模様を紹介しよう。
ロボットの動きを自然に感じさせる4つの要素
ファシリテーターの平田オリザさん(東京藝術大学特任教授)
参加者は机と椅子を会場の周囲に移動させ、中央の空間でワークショップを行った。
まず最初は、「好きな色は?」「好きな果物は?」というイメージしやすい事柄でグループを作りウォーミングアップ。「新宿と聞いて思い浮かべるものは?」という、参加者同士で空間共有する「コンテクストベースの会話」を質問に織り交ぜ、最後は「行きたい国は?」という質問に対し、回答者にファシリテーターが個人的な体験を語る「パーソナルベースの会話」に落とし込むという、一連の会話の流れを体験した。
そのうえで、「ロボットとの会話を違和感なく成立させるには、コンテクストベースの会話とパーソナルベースの会話の2つを常に意識することが大切」と解説。
2つ目の「イメージの共有」では、大縄跳びのワークショップを行った。数名で「エアー大縄飛び」を行い、それがいかにリアルに見えるかを演じるというもので、演劇のワークショップでも実際に使われている。ここに架空の縄を飛ばない人や、予想外の動きをする人が一人でもいると、見る人との「イメージの共有」は成立しなくなる。
「Pepperプログラマーの仕事は、ロボットがあたかも主体的に動いているかのように見せること」と「相手にロボットと思わせないこと」で、そのためには「Pepperの作り手とユーザーが同じイメージをいかに共有できるか」が要点であると平田オリザさんは述べる。
3つ目の「動き」に関しては、参加者はペアになって「エアー・キャッチボール」を体験。ボールを持たずに架空のキャッチボールをする場合と、実際のボールを使った場合とで、動きにどのような変化が出たのかを参加者同士で議論した。頭の中のイメージや思い込みだけだと上半身のみが動くなど「不自然な動き」になり、そのような動きは工学者やプログラマーが作りがちであるが、自他の動きを慎重に観察すればリアルな動きが可能となる。実際に「エアー・キャッチボール」と本物のキャッチボールを何度も繰り返していくうちに、バウンドさせたり、アンダースローにしたりなど、参加者たちはそれらしいフォームをさまざまと打ち出すようになった。そこでもまた、参加者同士の「イメージの共有」が成立している。