スキルアップ
2016年9月16日
たったこれだけで、音が劇的に変わる! いい音を求める人に教えたい「スピーカー学」
文・ 中村和宏
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正しく設置されなければ高性能スピーカーも意味なし


 具体的に見ていきましょう。

 第1にスピーカーの設置場所です。ブックシェルフ型(デスクトップ型)スピーカーだからといって、文字どおり本棚に置き、背面をぴったり壁面にくっつけていませんか? この設置方法はほとんどの場合、見栄えはよくても音響的にはNGです。小型スピーカーであっても、最低20~30cm以上は壁面から離すべきです。

 第2にスピーカーの高さです。耳の高さよりやけに低かったりしませんか? スピーカー――特に高音を担当するツイーターと呼ばれるスピーカーは、耳の高さに近くないと本来のスピーカーの能力を発揮できません。

 第3に左右のスピーカーの高さです。左右のスピーカーの高さは同じですか? 左右のスピーカーの高さは必ずそろっているべきです。人の耳は左右の音の差だけでなく、上下の音の差も認識するからです。

 第4に聴き手の位置から見たときの左右のスピーカーの距離です。左右で距離がひどく違っていたりしませんか? 聴き手からの距離が左右のスピーカーで大きく違うと、人の耳はその差を感知してしまい、その結果、左右のスピーカーを同じとみなすことができないのです。

 すでになんらかのスピーカーをお持ちで、「うちのオーディオシステムはいまひとつ......」と感じている方は、まずこの辺をチェックしてみましょう。ひとつでも該当するなら、それを改善するだけで「ずいぶん音がよくなった!」と感じるはずです。

部屋の音響特性は「柏手」でわかる!


 次に部屋の音響です。音響とは「部屋の中の音の吸収と反射の割合」です。音楽を聴く部屋の音響特性を把握するには、部屋の中でオーディオを聴くとき座る位置(リスニングポイント)の付近で盛大に柏手(かしわで)を打ちます。そして、その音を注意深く聴いてください。ちなみにこれはプロでもやります。

・手元で音が鳴ったように感じる場合  音の反射はそれほど大きくありません。スピーカーと聴き手の間に障害物がなければ、大がかりな部屋の音響調整は必要ありません。

・周りから音が鳴ったように感じる場合  残念ながら音の反射は結構大きいです。しかし、このような場合は、部屋のカーテンを防音(吸音)カーテンにして、カーテンを閉めた状態で音を聴いたり、布を垂らしたり、スピーカーをさらに壁面から遠ざけ、部屋の中央に寄せたりします。すぐに、大がかりな音響調整をする必要はありません。

 どうでしょう? こちらも一度確認してみることをお勧めします。もしすでに高性能なスピーカーを所有しているのであれば、なおさらです。

※本記事は東洋経済オンライン掲載の記事を再編集したものです。



本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践
失敗しない再生機器の選び方
中村和宏 著



中村和宏(なかむらかずひろ)
1967年、大阪府生まれ。5歳からピアノを習う。14歳のころからギターを独学で習得し、作曲も開始。自作曲を演奏するため、ベースも弾くようになる。慶應義塾大学経済学部入学後、バンド活動に勤しむ。ギター、キーボード、ボーカルを担当して、オリジナル・カバー問わずさまざまなバンドやセッションに参加。大学卒業後、サウンドデザイナーとして株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入社。効果音制作、音声収録、楽曲制作とゲームサウンド制作全般に従事。「エアーコンバット22」「タイムクライシス」など、おもにアーケードゲームのサウンド制作を手がける。開発機材の導入アドバイザー業務も並行して担当し、当時、まだポピュラーではなかった音響制作機材、Avid Technology「Pro Tools」の導入に関わる。2006年、バンダイナムコゲームス退社後、有限会社モナカに作・編曲家として参加。「テイルズ オブ イノセンス」(Nintendo DS)「同R」(PlayStation Vita)などのサウンドを担当。2010年、同社退社。現在はフリーランスの作・編曲家として活動中。民生機器の音響調整にも関わる。最新作は「タイムクライシス5」。
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