スキルアップ
2017年2月13日
マツコも納得!みんなが陥る先入観の「罠」
文・小山宣宏(ジャーナリスト)
私たちは経験と知識から「先入観」をもって、ものごとを判断しがちです。
人間の本能として、事実や根拠に立脚せずに間違った先入観を持ちやすいこともあり、振り返れば思い込み(固定観念)に過ぎなかった、ということはよくあります。
また常識や定説とされていることには、報じる側のマスコミや教える側の教育現場(専門家)も陥っている先入観の影響もあったり、「空気を読む」「同調する」といった日本人特有の問題もあったりして、真実とかけ離れていることがよくあります。
「ヒラリー有利!」と大方予測された2016年秋のアメリカ大統領選挙を見ても、トランプ氏が当選した結果から、あらためて先入観に捉われることの問題点を痛感した方も多かったのではないでしょうか。
『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系列)などのマスコミ出演も多く、最近『先入観はウソをつく』(SB新書)を刊行し、同書の中でコラムニストのマツコ・デラックスさんとの対談も行っている武田邦彦氏の本から、先入観を外すことがいかに大事かを見ていきます。
高名な学者も「詐欺師」であるという現実を見逃すな
みなさんは詐欺師というと、どういう人をイメージするでしょうか?
いちばん多く聞くのが、「見た目がさわやかだ」「いつもにこやかにしている」「感情を表に出さない」などですが、その答えは決して悪いものではありません。
けれどもこうした人が詐欺師として目の前に現れては、「この話、信頼できるあなただから話したんですよ」と言っては、ウソかホントか見分けのつかないお金儲けの話をする。
そうして「この人なら大丈夫かもしれない」と相手に心を許してしまい、お金を渡してみたものの、ある日突然、ドロンと消えてしまう。
「あの人は詐欺師だったのか!」と騙されてしまったときには後の祭りとなった...実に困った話ですが、こうした詐欺師はいつの世も存在するものです。
ところが、困ったことに最近の詐欺師はお金絡みではなく、テレビに出ている高学歴な学者までもが平気でウソをついてしまうありさまです。
たとえば地震の予知については、次のように述べられています。
かつて1970年代から「東海地震がいずれやってくる」と騒ぎだし、80年代から90年代にかけて、駿河湾周辺を震源としたマグニチュード8クラスの大地震が襲って、首都圏の機能はマヒしてしまう」などと、多くの人々を慌てさせました。(中略)
ところが、実際には阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震と、いずれの地震も予想だにしない地域で起こっています。
これらの事実を目のあたりにして、はたして地震学者は何というのでしょうか? 答えは簡単、「私たちが研究している活断層とは違う地域で起こった地震だった」とあたかも開き直ったかのように、平然とこう発言する姿が容易に想像できます。
(プロローグ「根拠なき先入観に騙される日本人たち」より)
「この人はいい人そうで安心できるから、お金を預けてもいいだろう」
「あの人は東大を出ている人だから、言っていることはたしかだろう」
「私の住んでいるところは、ハザードマップで大地震が来る確率が低いから大丈夫だろう」
これらはすべて「○○だろう」という先入観からとらえられていることです。
先入観とは希望的観測から作られるもの
先入観を作り出してしまっている要因として、武田先生は、
「お金が倍になりますよ」→心の奥底では「お金儲けをしてみたい」
「東海地震はいずれやってくる」→不安だからこそ、「地震を予知したい」
このように「○○したい」と希望を持ち、「だから大丈夫」だと思いたいからこそ、先入観によって願望を満たそうとしているのではないかと、私は分析しています。
(プロローグ「根拠なき先入観に騙される日本人たち」より)
このような考察を立てています。
そしてここから本題に入り、どうして先入観を持ってしまうのか、日本人によくみられる先入観について具体的に話を進めていき、みなさんがもっとも知りたいであろう、「先入観を外す方法」についても、武田先生のユニークな視点から事細かに描かれています。
武田 邦彦(たけだ くにひこ)
1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。テレビ番組「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、CS番組「虎ノ門ニュース8時入り! 」 「現代のコペルニクス」(DHCシアター)などに出演中。著書に 『ナポレオンと東條英機 理系博士が整理する真・近現代史 』(ベスト新書)、 『「正しい」とは何か?』(小学館)、『身近な科学50のウソ』(PHP文庫)など多数。
1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。テレビ番組「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、CS番組「虎ノ門ニュース8時入り! 」 「現代のコペルニクス」(DHCシアター)などに出演中。著書に 『ナポレオンと東條英機 理系博士が整理する真・近現代史 』(ベスト新書)、 『「正しい」とは何か?』(小学館)、『身近な科学50のウソ』(PHP文庫)など多数。