カルチャー
2017年3月8日
人間そっくりなのに怖い? ロボット開発の壁「不気味の谷」とは
『ロボット解体新書』より
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掃除用ロボットや巡回警備ロボット、人型のコミュニケーションロボットなど、私達のまわりにはたくさんのロボットが存在しています。これら一般的なロボットよりもさらに人間に近いロボットの開発・研究を行う分野があります。「ヒューマノイド」や「アンドロイド」と呼ばれますが、どちらも造語で、「人のようなもの」という意味合いがあります。最近では、見た目が人間そっくりのヒューマノイドも登場してきていますが、メカメカしいロボットに比べて「怖い」「気持ち悪い」と感じる人も多いのではないでしょうか。『ロボット解体新書』(サイエンス・アイ新書)から、その理由を探っていきます。


「不気味の谷」とは何か


 人間そっくりの姿を追求していくと、やがて周囲は不気味と感じる段階「不気味の谷」(uncanny valley)を迎え、その外観からさらに人間に近くなることで、人間同様のヒューマノイドのデザインにたどり着くとされています。

 不気味の谷は1970年、東京工業大学名誉教授の森政弘氏が提唱したものです。ロボットは機械的なデザインから人間に近づけていくと、人びとの好感度は向上していきます。しかし、人間と同じデザインにいきつく手前において、好感度が急落して、不快感や嫌悪感を感じる段階があるとしています。

 そっくりな人と会って「似すぎていて怖い」といいう感情に似ています。

図1●不気味の谷

 その谷を超えて、さらに人間に近い、ほぼ同じだと認識できるデザインになると好感度がふたたび急上昇すると予測しています。好感度の動きをグラフにした際、好感度は人間と同様とみなす直前で大きな谷を形成することから、その落ち込みを「不気味の谷」と名づけました(図1)。

 人型のロボットをデザインする場合、この概念を考慮して開発する必要があります。ロボットっぽい動きとデザイン、少し外観や動作が人間に近いアンドロイドは好感を感じますが、似すぎてしまうと不気味の谷によって、嫌悪感を抱かれる可能性が高くなります。

 コンピュータグラフィックス(CG)を用いた映画やアニメーションでも同様の現象が起きるといえるでしょう。人間を描く際は不気味の谷に落ちないように、あえてリアリティを抑えたキャラクターデザインを行うケースもあるといわれています。



ロボット解体新書
ゼロからわかるAI時代のロボットのしくみと活用
神崎 洋治 著



神崎洋治(こうざき ようじ)
ロボット、人工知能、パソコン、デジタルカメラ、撮影とレタッチ、スマートフォン等に詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、ベンチャー企業の取材を中心にパソコンとインターネット業界の最新情報をレポート。以降ジャーナリストとして日経BP社、アスキー、ITmediaなどで幅広く執筆。テレビや雑誌への出演も多数。最近はロボット関連の最新動向を追った書籍を執筆し、ロボット関連ITライターとして活躍中。主な著書に『図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本』(秀和システム)、『Pepperの衝撃!』(日経BP)
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