スキルアップ
2017年4月13日
なぜ超富裕層は、現金があるのにローンを組むのか
文・加谷 珪一
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世の中には、多くの投資本やお金持ち本であふれています。しかし、それを読んで実際にお金持ちになれた人は、どれほどいるでしょうか。「株価の予想や売買のタイミング、銘柄の選び方だけではお金持ちになることはできない」と断言するのは、経済評論家で『最強のお金運用術』の著者・加谷珪一さんです。そこには、お金持ちになるための大事な「知恵」が欠如しているといいます。ここでは、お金持ちが大切にしていながら、これまで注目されてこなかった「金利」の知識を、解説します。低金利時代だからこそ、読んでおきたいお金の教養です。


不動産を購入する絶好のチャンスはいつ?


『最強のお金運用術』(加谷 珪一 著)

 「お金持ちは、現金があるのにわざわざローンを組んで不動産を買う」という話を聞いたことはないだろうか。

 多くの人は、住宅ローンを組むのはお金がないからだと考える。

 現金で家を買えるだけのお金がないので、銀行からお金を借りて家を買うという理屈である。もちろん、この話はほとんどの人にとってウソではない。現金でポンと家を買える人はそうそういない。現実問題として銀行からお金を借りなければ、家を買うことはできないだろう。

 だが世の中には、家を買うことができる現金を持っているにもかかわらず、わざわざローンを組んで家を買う人がいる。こうした人はたいていがお金持ちである。当然のことだが、住宅ローンを組めば、金利を金融機関に支払わなければならない。絶対的な金額という意味では損をしてしまう。

 最近では2003年前後や2010年前後にこうした動きが顕著となっていた。
 共通しているのは不動産価格の異常な低迷である。

 日本の不動産価格はバブル経済の頂点だった1991年を境に下落が続いており現在は当時の半分以下の水準となっている。しかし、その間、バブル後の不良債権問題がピークに達した2003年から、米国のリーマン・ショックの2008年までの間は、一時的に不動産価格が息を吹き返していた。2003年前後には、価格を考えず投げ売りする物件が急増し、不動産の投資利回りは異常な水準まで上昇していたのである。

 リーマン・ショック後も同様で、一部の物件は投げ売り同然となり、その頃に不動産を取得すれば驚異的な利回りを実現できた。このようなチャンスをお金持ちは決して逃さない。そしてタイミングを逃さないためにお金持ちは金利の知識をフル活用するのだ。

 2002年から2003年にかけて、それまで平均すると1.5%程度だった長期金利が一気に0.5%まで下がった時期があった。これは金利のメカニズムをよく知っている人にとっては強力なサインとなる。このようなタイミングでは、思い切って銀行からローンを引っ張り、多くの不動産を買った方が得なのだ。実際、その後、不動産価格は急上昇し、高値で売却できた人は短期間で極めて大きな資産を作ることに成功した。

 では、こうしたタイミングでお金持ちの人はなぜ金利を払ってローンを組むのだろうか。単純に考えれば、不動産がこの先上がりそうなので、銀行からお金を借りてたくさん不動産を買ったということになる。

 しかし、一連の行為をもう少し掘り下げて考えてみると、もっと違った光景が見えてくる。重要なことは、金利というのは「時間」の概念と密接に関係しているという点である。

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最強のお金運用術
最強のお金運用術 富裕層だけが知っている 1%の金利の魔法
加谷 珪一 著



加谷珪一(かや・けいいち)
著者略歴、経済評論家。1969年仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、金融、経済、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っており、ニューズウィーク日本版(電子)、現代ビジネスなどで連載を持つ。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。著書に「ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方」(ビジネス社)「新富裕層の研究 日本経済を変える新たな仕組み」(祥伝社新書)「お金持ちはなぜ、『教養』を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)「お金は「歴史」で儲けなさい」(朝日新聞出版)「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)「株で勝ち続ける人の常識 負ける人の常識」(KADOKAWA)などがある。
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