スキルアップ
2017年6月28日
あのグーグルが、仕事でメールを使わないってどういうこと?
文・ピョートル・フェリークス・グジバチ
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(3)10%アップではなく10倍アップを目指す


 「来期の目標は、10%アップを目指そう」というのはよく言われることですが、グーグルでは10%アップではなく、「10倍」です。

 多くの企業は、今ある業務を100%こなしたうえで、そこに追加する形で成果を上げていこうという考え方を持っています。そのため「前年比10%増」といった目標が出てくるのですが、こうしたやり方では、従来の延長線上の発想から抜け出せず、しかも仕事量だけが増えていくということになりかねません。単に忙しくなって、疲弊するだけです。

 10倍を達成するために、まずやらなくてはいけないのは、自分の前提や、固定観念を破ることです。違うルール、違うやり方を考えるしかないのです。今と同じことをやり続けている限り、どんなにがんばっても2倍いけばいいほうだと思います。

 そういうと、何か難しいことのように感じられるかもしれませんが、要は「やりたいことがあるけれど時間がない」というときに、フリーの人にやってもらうとか、違う部署の人に協力してもらうなど、社内外のリソースをもっと上手に使ったり、人を巻き込こんでいったりすることでも、次のレベルまでいけると思います。

(4)パソコンを閉じる時間を意図的につくる


 さて、僕は「そんなふうに、パソコンを広げてすごい速さで仕事をしていて疲れませんか」と尋ねられることがあります。

 はい、疲れます(笑)。

 日々10倍の成果を上げようと、すごい勢いで仕事に取り組んでいると、頭が回らなくなって、バーンアウトしそうになることも少なくないわけです。そこでグーグルは、会社としても、いかに社員の身体を守って、脳を落ち着かせるかということに、力を入れているのです。
 たとえば、会議の前に瞑想(1分間パソコンを閉じて自分の呼吸に集中してただ座っているということだけでOKです)したり、それだけで集中した状態がつくれます。

(5)自分の仕事を壊す


 今一番大事だと思われるのが、「自分の仕事を壊す」ということです。

 これからの時代、競争は加速していく一方です。
 ライバルは人間だけではありません。人工知能(AI)やロボットが人間の仕事を奪おうと、ものすごい勢いで進歩し続けています。
 僕が考えるに、「AIに仕事をとられないために、今すぐできること」はひとつです。

 それは自ら自分の仕事をなくしてしまうこと。

 つまり、自らの仕事を、テクノロジーに置き換えて、もっと速くできないかと考えることです。

 配車サービス「UBER(ウーバー)」は、テクノロジーを使って、誰もが空いた時間にタクシー業務ができるようにして、従来のタクシーよりも安価なサービスを提供して一気にブレイクしましたが、そのおかげでアメリカのタクシー運転手の仕事が奪われつつあります。2015年の末には、サンフランシスコ最大のタクシー会社であったイエローキャブ(YellowCab)社が株主に対して破産宣告を行っています。

 同じようなことは、どんな業界でも起こり得ます。すべての仕事をIT化、自動化しようとする波は、今後とどまることはないでしょう。
 であれば、その業界のその仕事をよく知っている自分自身が、その仕事をIT化して、新たな事業を考えてはどうでしょうか。

 そこまでいかなくても、IT化して自分の仕事を減らすことで、もっと違う、新しい仕事を考えてはどうでしょうか。

(了)


世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか
グーグルの個人・チームで成果を上げる方法
ピョートル・フェリークス・グジバチ 著



ピョートル・フェリークス・グジバチ
ポーランド生まれ。ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年に来日。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタンレーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011年よりグーグルにて、アジアパシフィックでのピープルディベロップメント、さらに2014年からは、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。合気道も行う。
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