カルチャー
2017年9月1日
健康寿命を延ばす、正しい「歯の磨き方」とは?
文・豊山とえ子(歯科衛生士)
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日本人の平均寿命は世界トップクラスです。しかし健康寿命が尽きてから一生を終えるまでの「体調を崩して活動的に暮らせない期間」も、日本人は世界で最も長いという困った事態になっています。その原因として濃厚なのが「歯磨き」。にわかに信じがたい話かもしれませんが、突拍子のないことでも大げさなことでもありません。3万人以上の日本人の口を診てきており、『長生きしたけりゃ歯を磨いてはいけません』の著者でもある歯科衛生士の豊山とえ子氏に、正しい口腔ケア(口内を清潔で健やかにすること)とは何かを聞いてみました。


「口腔ケア」こそ、最も簡単で長続きする健康法!


 ピンピンコロリで一生を終える。

 これは誰もが望むことでしょう。
 では、ピンピンコロリに近づくにはどうしたらいいのか?
 栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレをためない、規則正しい生活、いろいろと挙げられますし、どれも正解です。
 ただ、わかっていても、実行になかなか移せていないはずです。

 では、普段必ずすることを少し変えるだけで済む方法なら、どうでしょう?
 元々生活に組み込まれていますから、長続きしやすいですよね。

 そこで提唱したいのが、歯磨きを変えること。

 その目的は、口の中を健やかできれいにする「口腔ケア(口の中のケア)」にあります。なぜ、口腔ケアが健康で長生きにつながるのでしょうか? それにはれっきとした理由が主に2つあります。

 1つは、口が自分でいじれる唯一の内臓であること。胃や心臓や脳は、自分の目で見られませんし、ましてやいじることはできませんよね。一方で口の中でしたら、簡単にいじることができます。

 もう1つは、口があらゆるものの入り口になっていること。食べ物、飲み物など、私たちの体を作ったり活動させたりするために大事なものを取り込みますが、残念ながらバイ菌など有害なものの入り口にもなっています。いくら体にいいものを食べて、運動にいそしんでも、口に毒素をためこんで体内に毒素を巡らせてしまっては、不健康そのものです。

口が汚いと脳梗塞、肺炎、狭心症、認知症をも引き起こす


表1●口が汚いことで発症し得る病気の一例

 口が汚れることで発症しうる病気は、実に多岐に及びます。代表的なものを挙げるだけで、表1にあるとおりです。

 中でも注目したいのが、肺炎。歯周病菌が肺炎の原因になりやすいのですが、この肺炎は今や、日本人の三大疾病に入ってしまったのです。肺炎で亡くなる方も多く、毎年10万にのぼります。
 歯をはじめ口の中をきれいにすることが、健康で長生きするのにとても大事であることがおわかりになったと思います。

 また、口が汚いと、歯がボロボロになって使い物にならなくなります。すると、食事が大きく制限されますので、十分な栄養がとりにくくなります。すると、健康で長生きから遠ざかりますよね。

 インプラント(歯の埋め込み)や総入れ歯にすればいいのでは? と思うかもしれませんが、人工の歯による食事はとても不自由です。噛むごとに激痛が走ったりなどで、食を楽しむどころではなくなるからです。



長生きしたけりゃ歯を磨いてはいけません
豊山 とえ子 著



豊山 とえ子(とやま とえこ)
歯科衛生士。1959年、宮城県登米市生まれ。日本女子衛生短期大学卒業。削らない歯科治療をする聖母歯科医院を、夫とともに経営。歯科衛生士として活動するだけでなく、歯科業界へ向けて、歯科医療や歯科経営のコンサルティングも行っている。歯科学会、雑誌への寄稿は多数ある。ホワイトニングコーディネーター(日本審美歯科学会)、日本顎咬合学会認定歯科衛生士(日本顎咬合学会)、第二種滅菌技士(日本医療機器学会)、第二種歯科感染管理者(日本・アジア口腔保険支援機構歯科感染制御推進機構)。LDA理事、株式会社T*SIS代表取締役も務める。
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