カルチャー
2018年1月30日
「赤信号を平気で渡る老人」への大きな勘違い
老人の困った行動の原因、実は認知症や頑固な性格にあらず!?
人間、年を取ると、周りを困らせる行動をとることが増えます。高齢者がこうなってしまうのは「認知症でボケてきたから」「カタブツでガンコになっているから」と思われる方も多いでしょう。「でも、大半はまったく違うところに原因があるのです」。そう唱えるのは、現在も診療の現場に立ち、のべ10万人以上の高齢者と接してきた『老人の取扱説明書』の著者でもある医師の平松類氏。国内外の最新論文やデータを膨大に読み漁って得た知識も総動員することで、そう結論付けました。では、真の原因はいったい、何でしょうか?
認知症やガンコな性格が信号無視の原因ではない...!?
高齢者は信号が赤になっても、平気でゆっくりと渡っています。もっと困るのが、もともと信号が赤なのに堂々と渡ってくることです。
どうしてそんな行動をとってしまうのでしょうか? すると、こう考える人が多いと思います。「車のほうが止まってくれると、老人が思っているから」「信号無視でも渡り切れるという自信を、老人が持ってしまっているから」。自己中であったり、性格がガンコになっているから、というわけです。
あるいは、「認知症でボケてしまっていて、赤信号も気づかず渡っているから」。
でもそんな高齢者は、非常に少数派。多くは、「老化による体の変化」が原因なのです。
高齢者はそもそも、信号機がよく見えていない
そもそも日本の信号機は赤になるのがとても早く、特におばあちゃんには渡り切れないように作られています。歩行者が1秒に1m歩いた後に赤になる設定になっているのですが、85歳を超えると男性は0.7m、女性は0.6mしか歩けないのです。
また、高齢者は信号機を元々よく見ていません。それは信号無視ではなく、「瞼(まぶた)が下がってくるから、信号機が設置された上のほうがよく見えない」「寝たきりにもなりかねない軽い転倒すら怖いので、下を見て歩かないと不安」「腰が曲がってしまうから、信号機はよく見上げないと見えない」など、多くの老化による体の変化が関係してしまいます。
そういった事情を知っていれば、周囲も「歩くのが遅いなあ」「なんで信号無視してるんだ?」と苛立つことも減るでしょう。
「赤信号でも平気で渡る」の解決策はコレ!
また、解決策も見えてきます。瞼の下がり防止には「目を強くつぶってから強く開けるという運動を、1日10回程度行う」「メイクを落とす際は、瞼を強くこすりすぎない」、転倒防止をして歩行速度を速めるには「シルバーカーを使う」「簡単なスクワットで足腰を鍛える」などが解決策の一例となります。いずれも、そんなに難しい方法ではありません。
周囲は、高齢者が信号の近くにいる際には、手助けしたり、車の運転中はスピードを落とすなどができます。
ここでは書ききれませんでしたが、高齢者本人ができることは他にもたくさんあります。
SB新書『老人の取扱説明書』では、このような老人のよくある困った行動の1つ1つについて、その理由を明らかにし、周囲や高齢者自身ができる解決策、そうした困った老人にならないために今から気をつけておくことを一冊にまとめてあります。
人生経験が豊富な高齢者のほうがだまされやすい
実家に帰ると、巨大なテレビや冷蔵庫を買っていたり、見慣れない高級羽毛布団があったり、もっと深刻になると不必要な家のリフォームの話が決まっていたりなどです。これは、店員や業者を信頼していることに原因がありますが、だまされてしまっていることも多いです。このような、お金がないという割に無駄遣いが激しいことも、よくある高齢者の困った行動です。
約束したのに「そんなこと言ったっけ?」と言って、完全に約束を忘れてしまっていることも、高齢者の困った行動の典型でしょう。
他にも、よくある老人の困った行動は多数あります。
「同じ話を何度もする」
「自分の家の中など、『えっ、そこで!?』と思うような場所でよく転ぶ」
「せっかく作った手料理に醤油やソースをドボドボとかける」
「『私なんていても邪魔でしょ?』など、ネガティブな発言ばかりする」
「実の息子の話は聞くけど、自分は無視される」
など、「嫁・姑問題」にありがちなことまで、多岐に渡ります。
真の原因は認知症や頑固な性格以外のところに転がっている
ただ、医学的によく調べると、これらの問題行動も、老化による体の変化が原因であることが非常に多くなっています。
「認知症」や「頑固な性格」と決めつけては、何も始まりません。
「何が原因だと予想されるのか?」「それを踏まえてどうすれば少しでも状況が改善されるのか?」を考えていくことが重要です。
老いて困った行動をする親などを持つ方も、これから高齢になっていくことに不安を抱えている方も、既に高齢になっている方も、そのことを意識することが大事です。
高齢者と関わる職業の方も知っておくべきことです。医療や介護の業界が主かもしれませんが、シニア層にも向けたビジネスでしたらすべてが関係します。営業、接客業をはじめ、商品開発の方も含めまして、社会人のほとんどの方が該当するでしょう。
以上の問題についても、周囲ができること、そして高齢者本人ができることが、『老人の取扱説明書』にはまとめられています。
高齢者も周りの方も、本書で高齢者の体の特性(原因)と解決策を知ることで、イライラすることが減り、高齢者本人は卑屈になることが激減するはずです。
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