ビジネス
2014年11月26日
限られた条件で最大の効果を出す「弱者の勝ち方」とは?
[連載] 開成高校野球部の「弱くても勝つ」方法【1】
文・山岡 淳一郎
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「自分は実力がないから勝てない」と思い込んでいるビジネスパーソンは多いだろう。

 そんな常識的な思い込みを壊そうと奮闘を重ねる高校野球の監督がいる。

 開成高校野球部監督・青木秀憲先生だ。

 開成高校といえば、東大進学数№1を誇る超進学校。

 しかし、現在の野球部は、「打てない、捕れない、投げられない」と三重苦(?)の選手も少なくない。

 さらに、練習時間は、週に1日。

 強豪校が毎日練習しているなか、弱小高校が週1の練習で勝てるわけがない、と誰もが思うだろう。

 ところが、青木先生は独特の方法論で野球部を指導し、東東京大会でベスト16まで進出。その年の甲子園出場校に挑んだ経験をもつ。

「高校野球の強豪校と呼ばれる学校には、スポーツ推薦で上手な人を集めるところもある。そんな不平等が当たり前の状況で、弱いチームが勝ったら面白いじゃないですか」(青木談)

 11月刊行のSB新書『開成高校野球部の「弱くても勝つ方法」』で取材協力していただいた青木監督の開成高校野球部流「弱くても勝つ方法」を紹介しよう。

底辺から勝ちあがるために必要なこと


 確かにビジネスの世界も不平等だ。

 大企業もあれば、中小企業もある。

 製品開発においても、「よーい、ドン」で始めるわけではなく、先行する会社があれば、後塵を拝する会社もある。

 では、どのようにすれば青木流の「弱くても勝つ」方法を応用できるだろうか。

 青木先生の考え方をまとめると、

・勝つための条件は何か
・譲れるものは何か
・常識を疑う
・「目的」をしっかり持つ

 ということである。

「ドサクサまぎれにコールドで勝つ」という作戦!


 野球で勝つための必須条件は、当然ながら「点」をとることだ。

「攻撃が弱かったら、まあ、まず勝てません。だったら守備はそこそこでいいから、徹底的に点をとる能力を鍛えたほうが、勝てる可能性は高まります」(青木談)

 さらにデータ的に分析すると、一試合につき打順は4~5回まわってくるが、守備は3~8回。そのなかで、捕るのが難しい打球は試合に1回あるかないか。

 であれば、とるべき策は、

・とにかく打って点を取る=勝つための条件
・守りは、そこそこでOK(捕れないものは開き直る)=譲れるもの

 ということになる。

 そこで、導かれた答えは、

・ドサクサ紛れでコールド勝ちに持ち込む
・週1回の全体練習ではバッティングだけやる

 という方針だ。

「強豪校では、『相手に点をやらなければ絶対に負けない』ということもありますが、これだけ下手だと簡単に点を取られます。最低限、相手に迷惑にならないよう捕れるものは捕る、ということでよいと思っています」(青木談)

 点は取られる、でも、それ以上に点を取れば勝てる。

 だから「ドサクサ打線でコールド勝ち」

「うちみたいなチームはリスクをとらないと勝てません。ほんとに博打みたいなもので、相手が強ければ強いほど、ハイリスク・ハイリターンで勝負を挑まねばなりません」(青木談)

 一見するとありえない作戦のようだが、常識にとらわれず、事実を客観的に見ることで、新たな自分たちの勝ち方が見えてくるのである。

(第1回・了)
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開成高校野球部の「弱くても勝つ」方法
限られた条件で最大の効果を出す非常識な考え方
山岡 淳一郎 著



【著者】山岡淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)
1959年愛媛県生まれ。ノンフィクション作家、東京富士大学客員教授。経済、政治、医療、スポーツなど分野を超えて旺盛に執筆中。著書『気骨 経営者土光敏夫の闘い』(平凡社)、『田中角栄の資源戦争』(草思社文庫)、『深海8000メートルに挑んだ町工場 江戸っ子一号プロジェクト』(かんき出版)、『原発と権力』(ちくま新書)ほか多数。

【取材協力】青木秀憲(あおき・ひでのり)
1971年群馬県出身。群馬県立太田高等学校から東京大学教育学部体育学健康教育学科、同大学院教育学研究科体育科学専攻の修士、博士課程を経て、1999年より開成中学高等学校保健体育科教諭、開成高校硬式野球部監督。1995年より東京六大学野球連盟審判員。