カルチャー
2015年8月13日
新幹線はいかにしてカタチとなるのか――新幹線デザインのキーワード 風・音・光+時
[連載] 新幹線をデザインする仕事【1】
文・福田 哲夫
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東海道新幹線が開通して半世紀――N700Aなどいまなお進化する新幹線は、いかにつくりあげられてきたのか。新幹線のデザインチームの一員である福田哲夫氏が、多くの技術者たちが集まるプロジェクトチームにおけるデザイナーの仕事について執筆した『新幹線をデザインする仕事』から、そのエッセンスを紹介しよう。


新幹線に求められる"おもてなし"の精神


N700系新幹線 撮影・ループスプロダクション ※無断転載を禁ず

 日本の社会交通基盤の中核を担う大動脈である新幹線システム。それゆえに、暮らしの中で日常的に利用される乗客へのサービスから、非日常として訪れる観光客へのサービスまで、おもてなしの精神による細部への配慮が欠かせない。

 安全で快適な安定走行を支える車両のしつらいは、プロジェクトを構成する運用側、エンジニア、デザイナーの三者を中心に、それぞれが専門性を発揮した議論を続けていくことになる。

 デザインチームの役割と取り組み方は、これまでに参加した各分野別にもプロジェクトごとにも異なっており、それは鉄道車両でも同様だ。プロジェクトの進め方から設計会議まで、時代によってもさまざまなカタチがあった。

 そして、プロジェクトごとに特有のカタチがあるのは、お互いの信頼関係の上に、それぞれの専門性が発揮できるよう、そのルールや進め方を個別につくり上げてきた歴史でもある。

乗客の視点に立って考えるような仕事


 その中でデザインチームは、プロジェクトの目標に対してどのような立場にあり、その専門性を発揮しているのか。

 安全と安定走行を前提に、どちらかといえば機能性や生産性など製造面からのアプローチをする車両メーカーの立場と、メンテナンスや運用を担う立場の運用会社との間で、可能な限り乗客の視点に立って考えるような仕事である。したがって創造性や審美性を核にして、快適性や安心感など主にサービス面からの設計を担っている。

 またそれはプロジェクトメンバーの意見を可視化し、プロジェクトの方向性を指し示すことにある。わかりやすくいえば、〝たたき台〟をつくる立場である。ここにはもちろん車両メーカーのデザイナーや、運用側からの実務担当者のほかに、各分野の研究者の立場にあるメンバーも加わり、多角的な検討が行われていく。

 エクステリア・デザインの仕事は、審美的にも空力的にも性能向上をめざす先頭形状の例がわかりやすい。また車体の断面、景色を眺める側面の窓、台車や床下の機器カバー、外板の塗装を含む色彩計画やロゴマークの考案から行き先情報表示装置などの画面まで挙げられる。

 室内を取り扱うインテリアデザインでは、安全と安定走行のための運転席と周辺機器やスイッチ類の配置までを決めていく。また乗降口、客室のしつらいからシートの座り心地、多くの要素を組み合わせ最適化を考えていく。

 さらにプロジェクトはそれらをバランスよく統合し、環境性能に優れた魅力ある車両として維持するための工夫などの検討会議が続けられていく。

 デザインはつくるときの話だけではない。定期点検を繰り返しながら,いつまでも美しく保つための技術は、何事もなかったように復元させるメンテナンス技術であり、細心の注意を払いながら作業が進められる。

 普段の利用客には目にすることがないようなところにも気配りをしてデザインをする。プロジェクトチームとは、そのような縁の下の力持ちのような存在でもある。

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新幹線をデザインする仕事
「スケッチ」で語る仕事の流儀
福田哲夫 著



【著者】福田哲夫(ふくだ・てつお)
インダストリアルデザイナー。1949年東京に生まれる。日産自動車のデザイナーを出発点として、独立後は公共交通機関や産業用機器を中心に、指輪から新幹線まで幅広い分野のデザインプロジェクトに携わる。特に新幹線車両では、トランスポーテーション機構(TDO)として300系、700系、N700系「のぞみ」をはじめ、400系「つばさ」、E2系「あさま」、E1系、E4系「MAX」の他数々の先行開発プロジェクトにも携わってきた。ビジネスやリゾート向けの特急車両、寝台車など鉄道車両の開発プロジェクトを評価され受賞多数。現在は産業技術大学院大学特任教授・名誉教授、京都精華大学客員教授、女子美術大学特別招聘講師ほか。(公財)日本デザイン振興会グッドデザイン・フェロー。共著に『プロダクトデザイン』日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)編(ワークスコーポレーション)。次世代を担う子どもたちへ"ものづくりの楽しさ"を伝えるワークショップ活動を通じて、未来への夢を一緒に描き語りかけている。