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2015年10月7日
世紀の発見!「ニュートリノ」に質量があると何がスゴイのか
文・荒舩良孝、監修・大栗博司
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2015年10月6日、東京大宇宙線研究所長の梶田隆章さんが、ノーベル物理学賞を受賞しました。受賞の決め手なったのは、1998年に「ニュートリノ」に質量があることを実証したこと。それが、どのようにして実証されたのか。サイエンス・アイ新書『マンガでわかる超ひも理論』から、解き明かしていきましょう。


30年間間違いのなかった素粒子の「標準理論」


物理学の常識を覆した発見!

 素粒子の世界を探求し、そのふるまいを説明するために、たくさんの科学者が知恵を絞り、それまでの理論を積み重ねて誕生したのが素粒子の「標準模型」だ。

 標準模型がほぼできあがり、物理学者の間に広まってきたのが1970年代から。それから30年間、たくさん行われた素粒子の実験は、ことごとく標準模型の予言どおりの結果を示してきた。

 これまで行われた素粒子関係の実験結果を集めると、700ページにもなる本ができあがる。1998年までは、その本に記されているデータはすべて標準模型と一致していた。

 その標準模型に待ったをかけたのが、1998年に発表されたニュートリノの重さだった。この発表は世界を駆け巡り、『ニューヨークタイムズ』の1面を飾るほどだった。なぜ、ニュートリノに重さがあることがそんなに問題だったのだろうか。それは、ニュートリノに重さがないことが標準模型の根幹を支える前提となっていたからである。

 素粒子は目には見えないが、この宇宙の中を飛び交っている。もちろん、私たちの周りにも、目には見えないがたくさんの素粒子が飛んでいる。この飛び方をよく見てみると、地球のように自転しながら飛んでいた。その素粒子の自転は右回りと左回りの両方見られるはずなのに、ニュートリノの場合は片方しか見ることができなかった。これはおかしいということで考えられたのが、ニュートリノは光速で動いているから、片方しか見ることができないという理論だった。素粒子の場合、少しでも重さがあると光速で動くことができないので、光速で動くニュートリノは重さがゼロでなければならなかったのだ。

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マンガでわかる超ひも理論
なぜ究極の理論とよばれるのか
荒舩良孝 著  大栗博司 監修



著者:荒舩良孝
1973年生まれ。科学ライター・保育士。東京理科大学在学中より科学ライター活動を始める。ニホンオオカミから宇宙論まで、幅広い分野で取材・執筆活動を行っている。おもな著書に、サイエンス・アイ新書『宇宙の新常識100』がある。

監修:大栗博司
1962年生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学大学院修士課程修了。東京大学理学博士。プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを経て、カリフォルニア工科大学 理論物理学研究所所長およびフレッド・カブリ冠教授、東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。おもな著書に、『大栗先生の超弦理論入門』(講談社ブルーバックス)、『重力とは何か』『強い力と弱い力』(幻冬舎新書)、『素粒子論のランドスケープ』(数学書房)などがある。