カルチャー
2017年5月9日
野村克也が憂う、WBC後遺症――開幕から不調の代表選手たち
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2017年3月に開催された第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本は、第1次予選、2次予選と全勝で勝ち抜き、アメリカに渡っての戦いとなった準決勝のアメリカ戦で1対2で惜敗した。大会前は期待の声が小さかった侍ジャパンにしてみれば、大健闘の結果を残したといえるが、その一方で、WBCで活躍した多くの選手たちが、ペナントレースに入った途端に調子を崩してしまうという事態に襲われた。この点について、2017年5月に発売されたばかりの『負けを生かす極意』(SB新書)のなかで、野球評論家の野村克也氏が冷静に分析している。


WBC代表の選手たちが軒並み苦しんでいる現状から、考えなければならないこと


「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で4大会連続でベスト4以上。あらためて日本野球のレベルの高さを見ることができた」と語るのは、野球評論家の野村克也氏。だが、WBCに出場したツケを意外な形で代表選手たちに襲った。ケガや不振による"WBC後遺症"である。
 野村氏は著書『負けを生かす極意』のなかで、次のように指摘している。

「日本だってたしかに国内でできうる限りのトップクラスの選手を集めた。だが、投打の中心になるはずだった大谷翔平が、一度は代表に選出されながらも、右足首の痛みで辞退したり、WBCに選出された先発投手が軒並み開幕投手を辞退し、野手も筒香や中田ら、WBCで中軸を担った選手たちが軒並み調子を落としている姿を見て、あるいはWBCで故障したときのリスクを考えたときに、『この大会に出るのは止めたほうがいいな』と考える日本のトップクラスの選手が、今後出てきたってなんら不思議な話ではない」

 WBCの準決勝のアメリカ戦で敗退してから(3月22日)、日本のプロ野球の開幕は31日だったので、その間は9日しかない。限られた時間のなかで、とくに投手はWBCの疲れをとることは難しいだろうし、巨人の菅野智之や楽天の則本昂大ら、例年なら開幕投手を務める人材も、今回は回避せざるをえなかった。

 また昨季、本塁打と打点のタイトルを獲得したDeNAの筒香嘉智は、今季14試合(4月21日時点)を消化して時点で本塁打0、打点1と、彼の持っているポテンシャルでは考えられないほどの落ち込んだ成績だ。筒香に限らず、日本ハムの中田翔は右内転筋挫傷で二軍落ちした。そして彼らが所属するDeNAと日本ハムは、筒香、中田の不振や故障に比例するかのように下位を低迷している。

 もちろん昨季2冠のタイトルを獲得した筒香に対し、セ・リーグの5球団による執拗なマークが功を奏しているという見方もできるが、「WBCによる傍からは見えない疲労」に襲われていることだって考えられる。無論、打者に限らず、WBCで登板した投手陣だって、ペナントレースの開幕から臨戦態勢に入るにはしばしの休息が必要だったはずだ。

 WBCに出場した選手が不振やコンディション不良に陥っている現状を見るにつけ、「WBC代表に選出される意味」について、個々の選手が考える必要があるかもしれない。

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負けを生かす極意
野村 克也 著



野村 克也(のむら かつや)
1935年生まれ。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、 不動の正捕手として南海の黄金時代を支えた。「ささやき戦術」や投手のクイックモーションの導入など、駆け引きに優れ工夫を欠かさない野球スタイルは現在まで語り継がれる。また、70年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ四球団で監督を歴任。 他球団で挫折した選手を見事に立ち直らせ、チームの中心選手に育て上げる手腕は、「野村再生工場」と呼ばれ、 ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。 インタビュー等でみせる独特の発言はボヤキ節と呼ばれ、 その言葉はノムラ語録として多くの書籍等で野球ファン以外にも広く親しまれている。 スーパースターであった王・長嶋と比較して、自らを「月見草」に例えた言葉は有名である。現在は野球解説者としても活躍。著書に『名将の条件』(SB新書)など多数ある。