ビジネス
2013年11月6日
人気アニメ『NARUTO』やAKB48に学ぶ理想のリーダーシップ像
『バカと笑われるリーダーが最後に勝つ』より
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困難な課題を自らの力で乗り越えてリーダーシップが開発されていくとき、リーダーたちがみせる行動特性があります。それは、神話学や心理学で考察されてきた「トリックスター」の特徴です。これに着目して、日本人にピッタリあった新たなリーダー像を探っていきましょう。


「トリックスター・リーダーシップ」という新たな考え方


 10年間、ミドル・マネジャー(中間管理職)を中心に、リーダー層の相談にのってきました。その経験からリーダーシップの「つまずき石」が、次の3つに集約できると感じています。

1)自己認識のズレ
2)行動範囲の狭さ
3)思考の硬直化(真面目さへの過度の執着など)

 1)「自己認識のズレ」は、自分と周囲との評価にズレが生じ「迷惑なリーダー」になっているケースです。部下を見くだすトゲのある言葉を日常的に使っていながら、それが部下の心を傷つけ、チームの士気を停滞させていることに、リーダー本人が気づけていない場合がそれです。

 2)「行動範囲の狭さ」は、仕事で必要とされる人間関係に自分を閉じ込めて、行動範囲が限定的になることです。部署や会社の境界を越えてのコミュニケーションが不足し、自己成長のチャンスを失いがちになります。これは、職歴の長さからくる「慣れ」「慢心」「現状維持志向」やキャリアに傷をつけたくない「失敗への恐れ」「チャレンジ精神の欠如」が、主な原因になります。

 3)「思考の硬直化」は、人生経験を重ねてつくられた「固定観念」が、より強固になって柔軟性を失うことです。その中で「真面目さへの過度の執着」は、リーダーに多少は必要とされる「したたかさ」を拒否してしまうことです。日本人は「道徳的な美」を理想とするので、不条理な現実に対して「したたかさ」を発揮することにアレルギー反応を示し、悩みを深めてしまいます。

 筆者とリーダーが個別に話し合いを重ね、これらの課題を自らの力で乗り越えリーダーシップが開発されていく時、リーダーたちが共通してみせる行動特性のあることに気がつきました。
 それが、神話学や深層心理学で考察されてきた「トリックスター性」です。

 「トリックスター」は「道化」「いたずら者」と訳され、ややネガティブなイメージをもっている人も多いでしょう。ただ、神話に登場する「トリックスター」たちが、愚か者でありながら境界を越えて幅広く行動し、したたかに英雄的偉業を成し遂げることはあまり知られていません。つまり「3つのつまずき石」と逆の特性をもつ存在が、「トリックスター」なのです。

 「日本は、世界におけるトリックスターだ」といわれます。海外の文明を貪欲に取り込み、したたかに日本人オリジナルの文化を創造した歴史があります。「武士道」は、中国思想の儒教を取り入れたものです。世界を驚かせたソニーのトランジスタ技術にしても、その特許は米国企業のものでした。

 私は日本企業のリーダー層が、清く正しく美しい企業姿勢を社会から強く求められ、日本人の「強み」になりうる「トリックスター性」を肯定できないことが、組織の力を削いでいると感じています。

 そこで筆者は「トリックスター・リーダーシップ」という新たな概念を提唱しています。
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バカと笑われるリーダーが最後に勝つ
トリックスター・リーダーシップ
松山 淳 著



【著者】松山 淳(まつやま じゅん)
1968年 東京都生まれ。リーダーシップ・スタイリスト/コンサルタント/MBTI認定ユーザー。 約9年間広告代理店に勤務後、アースシップ・コンサルティング設立。世界の企業が活用するMBTI(R)メソッドで自己分析を行い、リーダーたちがその人らしいリーダーシップを発揮できるようにサポートする。「リーダーの自己成長を支援し 人と組織を元気にすることで 世界の家族にたくさんの笑顔をひろげる」を使命に、リーダー層(経営者、起業家、管理職)を対象とした個別相談、コーチング、研修、講演、執筆活動など幅広く活躍中。
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