ビジネス
2013年11月7日
オタクの財布をねらえ! 『艦これ』から見るオタクビジネス
文・寺尾幸紘
オタクをバカにしたビジネスは失敗する!
最近、オタクの間で急速に流行し始めているコンテンツがある。それはDMM.comとKADOKAWA GAMESが共同で開発・運営している『艦隊これくしょん -艦これ-』だ。「艦これ」は大日本帝国海軍の軍艦を萌えキャラに擬人化したブラウザゲームで、軍艦の名前を持ち35.6cm連装砲などの兵装を持った女の子が敵艦と戦うというコンテンツである。この「艦これ」にはオタクの心をつかむ多くの要素が含まれている。「艦これ」を分析することでオタクの特性を洗い出すことができるだろう。
「艦これ」は軍艦である女の子が敵艦にやられて大破すると服が破ける。このゲームは過剰な露出は含まれていないが、それでもエッチなものが大好きなオタクには非常に魅力的な要素だと言える。オタクには昔から擬人化という文化があり、Windowsシリーズや新幹線など様々なものを擬人化し続けてきた。日本人には神道の考え方が深く根付いているため、万物に宿る神の一つの姿として描き出された擬人化キャラクターはオタクに受け入れられやすい。また、元が軍艦であるため各キャラクター(「艦これ」では「艦娘」と呼ばれている)には背景やストーリー性がある。これは作品の中で描かれるものではなく、擬人化されたその時からそのキャラクターが帯びているものを指す。作り込まれた設定やストーリー性はオタクが大好きなものの一つである。最後に、最近売れ始めた人気新人声優を起用している点もオタクに好意的に受け入れられている理由の一つだろう。
自身がオタクではなく、近くにオタクの知り合いがいない人にとってはオタクの特性は奇異で難解なものなのかもしれない。しかし、近年のオタクビジネスの状況を考えると「理解できないから乗り出さない」というのは勿体ないように思える。「オタクから金をむしり取ってやろう」とか「どうせ相手はオタクだし」という考え方を捨て、オタクについて学び、オタクに好意的なビジネスを展開すれば、オタクは敵ではなく強力な味方となって貴方のビジネスをサポートしてくれるだろう。
※当文章ではオタクを「秋葉原などで扱われることが比較的多いコンテンツに、金銭または時間を日常的に費やしている生活者」と定義しています。
(了)
【著者】寺尾幸紘(てらおゆきひろ)
株式会社秋葉原総合研究所の代表取締役社長。TVチャンピオン「アキバ王選手権」(2005年)で優勝。同社は東京・秋葉原の情報サイト「アキバOS」を運営するほか、秋葉原を舞台としたテレビ番組やイベントなどの企画・監修も手掛ける。
株式会社秋葉原総合研究所の代表取締役社長。TVチャンピオン「アキバ王選手権」(2005年)で優勝。同社は東京・秋葉原の情報サイト「アキバOS」を運営するほか、秋葉原を舞台としたテレビ番組やイベントなどの企画・監修も手掛ける。