ビジネス
2013年12月2日
みんなに愛される「おもてなし」のヒミツ(ディズニーの仕事術)
インタビュー・鎌田 洋
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ほかの企業との「おもてなし」の違い


───一方でディズニー以外でも「おもてなし」で有名な企業がたくさんありますが、それらとディズニーの「おもてなし」の違いはあるのですか

「お客様を喜ばす」という基本的なところは同じです。トヨタのレクサスなんかは、ショールームに行ってお茶を飲んでると、点検でもないのにクルマ全部洗ってくれる。京都なんかに行ってレクサスの車内からコンシェルジュに電話すると、おいしいものが食べられるお店を教えてくれて、カーナビの設定までしてくれる。日本のホテルも、世界から見れば高度なおもてなしをしてくれます。ただ、そこに行ける人は限られてますよね。クラス分けというか。ディズニーのすごさって、ターゲットを絞っていないところにあるんですよ。だって、子どもからご老人まで、有名人だって、誰でも来るから。

───確かに誰でも来ますよね。そうした人たちに、それぞれ「おもてなし」するのは大変ですよね

 だから、ディズニーにはサービスのマニュアルがないんです。もちろん、作業のためのマニュアルはあります。掃除の仕方とか、ショップならオペレーションの仕方とか。だけど、いろんな人が来るから、1つのサービスのあり方では括れない。括れるとしたら、Safety、Courtesy、Show、Efficiency、この優先順位に基づいて行動するのみ。それ以外の部分はキャストの判断にゆだねられている。臨機応変というか柔軟性があるんだよね。たとえば、つい先日はディズニーランドだけで8万6千人が入場したんだけど、その人たちをおもてなしするって言ったてこれは並大抵のことじゃできないわけですよ。なんでそれができるかというと、キャストそれぞれが自分で考えているパフォーマンスを自由にやっているからできるんだと思うんですよ。逆に、画一されたサービスはできないと思いますよ。

 ちなみにディズニーでは入場者が多いと入場制限になるんだけど、なぜかって言うと、入場しているゲストたちの満足度が下らないようにするため。例えば、並ぶ時間が多くなって、アトラクションを体験する回数も少なくなる。本当は、入れたほうが儲かりますよ。

───ゲストの効率を考えることも「おもてなし」なんですね

 ディズニーって、ゲストにはまた来てもらいたいって考えるんですよ。ディズニーのビジネスって、息が長いんです。だって、子どもの頃からファンを作っていって、その子どもが中学生、高校生になったら友達といっしょに来て、恋人ができたら恋人といっしょに来て、子どもが生まれたら今度は子どもといっしょに来て。つまりリピートするサイクルをものすごい長いスパンで考えているんですよ。

───長期的にファンになってもらうと

 しかもそれが繰り返し来る。という発想だよね


ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと
鎌田 洋 著



【著者】鎌田 洋(かまた ひろし)
1950年、宮城県生まれ。商社、ハウスメーカー勤務を経て、1982年、(株)オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドオープンに伴い、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成する。その間、ウォルト・ディズニーがこよなく信頼を寄せていた、アメリカのディズニーランドの初代カストーディアル・マネージャー、チャック・ボヤージン氏から2年間にわたり直接指導を受ける。その後、デイカストーディアルとしてディズニーのクオリティ・サービスを実践した後、 1990年、ディズニー・ユニバーシティ(教育部門)にて、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導、育成する。1997年、(株)フランクリン・コヴィー・ジャパン代表取締役副社長を経て、1999年、(株)ヴィジョナリー・ジャパンを設立、代表取締役に就任。著書に『ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと』『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』『ディズニーありがとうの神様が教えてくれたこと』(共に、SBクリエイティブ)、『ディズニーの絆力』(アスコム)がある。
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