スキルアップ
2013年12月25日
滝川クリステルの「ビジュアルハンド」から学ぶ"伝える力"
[連載] 心を動かす!「伝える」技術【1】
文・荒井 好一
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おもてなしは、コミュニケーションの神髄を言い表している


『心を動かす!「伝える」技術 五輪招致7人のプレゼンターから学ぶ』(荒井好一 著)より ※クリックすると拡大

 プレゼンテーションの技術に話を戻しますと、おもてなし自体がコミュニケーションの神髄を、実は言い表しているのです。

 オランダのロッテルダム動物園のゴリラの檻の前には、奇妙なメガネが置かれています。

「ゴリラを見るときは、このメガネを掛けてください」という張り紙と共に。そのメガネには人間の目が描かれていますが、横や斜めを見ている目です。真ん中に穴が開いていてそこからゴリラを見るのですが、ゴリラには直接目が合わないようになっています。ゴリラを刺激しないためにこのメガネが用意されているのです。なぜなら、動物同士が目を合わせるということは威嚇を表し、闘いをもたらすのです。上の図(目、手、声の役割)は、人間や動物が持つ「目や手や声」とコミュニケーションの関係を記したものです。動物はすべて生存するために「目や手や声」を使います。人間は道具を得て、それらを使って自分が何かを得るために、「目や手や声」を使います。

 これに対して、社会生活でコミュニケーションを円滑に行うためには、相手のために「目や手や声」を使う必要があります。例えば、愛する子供を見守るために目を使い、相手を承認するために頷きながら目を使います。相手を褒め称えるために拍手し、応援するために握り拳を振ります。声も同様です。落ち込んでいる友人を元気づけるために、明るい声を掛けます。落ち着かせるためにあたたかくゆったりとした声を使います。すべて相手のことを思い、相手に与えるためのコミュニケーションです。

 与えて与えて与えて、そのうちひとつが返ってくるかもしれない。まさに「利他の精神」がコミュニケーションの極意です。そう、おもてなしは人と人が繋がるコミュニケーションの文化なのです。

★★ここが学びのポイント★★
 相手に与える「目や手や声」の表現は、自分が思っているよりもオーバーな表現をしないと相手には伝わりません。オーバーであっても、心がこもり相手のことを第一に考えていれば、わざとらしくはなく、適切に伝わります。





心を動かす!「伝える」技術
五輪招致7人のプレゼンターから学ぶ
荒井好一 著



【著者】荒井 好一(あらい よしかず)
1971年同志社大学法学部卒。総合広告会社・大広(業界4位)に38年在籍し、クリエイティブ・ディレクターとして、パナソニック、キリンビール、武田薬品などを中心に600本余りのプレゼン歴がある。クリエイティブ局長、経営企画局長を経て人事担当役員に就任し、専門教育プログラムを開発。2010年に、「一般社団法人 日本プレゼン・スピーチ能力検定協会」を設立し、理事長に就任。 新しいプレゼンテーションとスピーチの価値を開発・啓蒙すべく、日々研究を重ねている。 「目・手・声」の身体コミュニケーション機能を駆使する独自のメソッドで、「プレゼン・スピーチセミナー(全5回コース)」を、東京・永田町教室で30 期、大阪教室で5期、開催してきた。企業研修でも、みずほ総研のプレゼンテーション講座や、東京海上日動火災保険のカフェテリア研修に採用されている。企業経営者や幹部向けを含むパーソナルレッスンを60回以上実施。IT企業や技術メーカーの「伝えられる技術職」「売れる営業職」のスキル向上にも貢献し、高い評価を得ている。 著書に、『心を動かす!「伝える」技術 五輪招致7人のプレゼンターから学ぶ』(SBクリエイティブ)、『日本人はなぜスピーチを学ばないのだろう』(象の森書房)がある。
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