ビジネス
2014年2月12日
1つ3000円のガトーショコラの「レシピ」が公開されているワケ
『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ』より
配送料の仕掛けで売り上げ増
ケンズカフェ東京の売り上げのおよそ70%は、ネット通販による売り上げで占められています。早期からネット通販ビジネスに参入したのが、現在の成功の土台になっていると思っています。
ネット通販ビジネスで、ネックになるのが配送料です。
ありがたいことに注文は北海道から沖縄まで全国から入ります。配送には年間を通して冷蔵のクール便を利用していますから、配送料として平均800円が実費としてかかります。そのため以前は、商品代金とは別に配送料として全国一律800円をちょうだいしていました。
しかし、ネットなどを通して「3000円の商品に800円の配送料は高い」という声をいただくことがありました。確かに配送料が商品価格の約27%というのは安くはありません。
そこで配送料は全国一律500円に値下げ。1か所につき2本以上、つまり6000円以上お買い上げの場合には配送料を無料にすることにしました。
実費は変わらないので配送料の値下げ分はこちら側の持ち出しとなります。経費はその分かさんでしまいます。
でも、1本3000円というゆとりのある値段にしてあるおかげで、その経費はちゃんと吸収できる体制になっています。それに配送料を値下げしたことが功を奏して、売り上げは着実に伸びています。
それまでは1本だけ注文していた常連のお客様が、「配送料が無料になるなら2本買って1本は誰かにプレゼントしよう」と"ついで買い"をしてくれるようになったのです。
売り上げがさらに伸びて、配送料のコストを吸収できるとはっきりわかったので、将来的には1本から全国送料無料というサービスに踏み切るタイミングがあるかもしれないと思っています。
日本最大級のあるファッション通販大手では、利用者の「1050円(の商品)なのに、送料手数料入れたら1750円ってひどい!」という内容の過激なツイートに対し、怒った運営会社の社長が過激なツイートを返して炎上。この騒動の結果、それまで1万円以上だった配送料無料サービスを拡充し、全商品の配送料を無料化する運びになりました。
怪我の功名ではありませんが、この無料化で売り上げや利益がプラスに転じるのかどうなのか。他業種の話とはいえ、私は注視しています。
そうかと思えば、日本のティファニーの公式通販サイトでは、たとえ10万円の商品を買っても送料が1000円かかります(2014年2月現在)。ティファニーを買うようなアッパーのユーザーには送料がいくらかかるのか気にする人が少ないのでしょうし、たとえ送料がかかってもティファニーの商品がほしいという圧倒的なブランド力の表れでもあります。
ケンズカフェ東京も、もっとブランド力を高めれば、送料を気にせずにご購入いただけるようになるかもしれません。
(了)
【著者】氏家 健治(うじいえ けんじ)
1968年東京生まれ。「ケンズカフェ東京」オーナーシェフ。ホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロ等、高級店で修業を重ね、調理および製菓・製パンの技術を体得する。98年29歳で独立。新宿御苑前にケンズカフェ東京を開店。テレビや専門誌等で、調理指導や料理解説をするほか、プロ向けの講習会・講演会も日本全国で多数行っている。
1968年東京生まれ。「ケンズカフェ東京」オーナーシェフ。ホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロ等、高級店で修業を重ね、調理および製菓・製パンの技術を体得する。98年29歳で独立。新宿御苑前にケンズカフェ東京を開店。テレビや専門誌等で、調理指導や料理解説をするほか、プロ向けの講習会・講演会も日本全国で多数行っている。