ビジネス
2014年3月3日
マクドナルド原田泳幸が伝えたい
「リーダーになっても学び続けよ」
[連載] バトンタッチ ~若きビジネスパーソンへ伝えたいこと【5】
文・原田泳幸(日本マクドナルド会長)
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アップルとマクドナルドの業績をV字回復させた原田泳幸氏。日本を代表する経営者が、若き自身の経験から、現代の若きビジネスパーソンへ向けて金言を送る大好評連載もいよいよ最終回。リーダーの在り方や役割、そのために20・30代でやっておくべきこと、目から鱗のビジネスヒントがここに。


学び続けるリーダーこそ最高の手本


原田泳幸 氏(日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEO)

 リーダーの資質とは「学ぶ力」である。学ぶ力は、その人材の伸びしろそのものだ。会社あるいは自分の成長に繋がるのであれば、未知の仕事にも躊躇なく手を挙げられる、絶え間ない成長を自分に課すことができる。

 そんな人材こそが未来のリーダー候補なのだ。つまり、伸びしろがなくては話にならない。

 過去、大きな成果を挙げてきたかどうかより、これから新しく任されるポストで大きな成果を挙げられるかどうかが肝心であるということだ。それには、現時点で持っている知識や経験に固執することなく、どんなものでも柔軟に取り入れ、自分なりに消化する力が不可欠。すなわち、学ぶ力なのである。

 そして、実際にリーダーになってからも学ぶ力の大切さは変わらない。社員たちは上司を手本にして育つもの。彼らに「もっと学びなさい」と求めるなら、リーダー自身が「もっと学ぶ」姿勢を見せる必要がある。

 新入社員よりも先輩社員、係長よりも課長、課長よりも部長、部長よりも社長と、ポジションが上になるほど学ぶ力が増していく。これが強い企業の条件である。

 ただし、「学ぶ」=「仕事漬け」という意味ではない。プライベートが充実しなければ、仕事での充実感は得られず、新たなひらめきも生まれてこないだろう。

オン・オフの切り替えがひらめきを生む!


 私がアップル時代から「18時以降は仕事をしない」と決めているのも、そのためだ。毎日18時には会社を出て、以降は家族との時間やスポーツ、音楽などの趣味にあてる。

 このワークスタイルは、「多忙なトップマネジメント」というイメージに反するらしく、「なぜそんなことをしているのか?」としばしば人に尋ねられる。理由は簡単だ。社外で過ごす時間により多くの出会いや気づきがあり、仕事にもプラスに働くからだ。

 実際、「これは絶対解けない」と思うような経営上の課題に直面しても、ジョギングをしたり、ゆっくり入浴をして気持ちを切り替えるだけで、ぱっと解けたりすることがよくある。むしろ、会社の机で唸り続けているほうが、ひらめきの瞬間は訪れないように感じる。

 「18時退社でよく経営者の仕事がこなせますね」「時間が足りなくなりませんか?」とも心配されるが、特に困ることはない。日中の時間を効率的に使うだけである。

 たとえば、私が朝4時に起床するのも工夫の1つ。5時までには部下たちの指示をメールですべて終わらせてしまう。そして、5時からはジョギングで身体と頭を目覚めさせる。こうすると最高の状態で1日の仕事を始められる。

 「長い時間働いている人間ほど偉い」と考えるのは、日本の悪しき慣習だ。実際は逆なのである。ずっと仕事漬けでは、心身ともに疲弊し、回る頭も回らなくなってしまう。その結果、ムダに残業時間が延びていく。短時間で効率よく仕事をするスキルを身につければ、社内での評価も高くなるのに、そのチャンスをみすみす逃している。

 リーダーの仕事は、チーム全体のパフォーマンスを上げることであり、残業時間を自慢することではない。上司がいつまでも会社に残っていたら、部下たちも帰りにくいだろう。自分自身のワークスタイルが、周りに悪影響を与えていないか、今一度振り返ってみてほしい。

(了)





バトンタッチ
若きビジネスパーソンへ伝えたいこと
原田泳幸 著



【著者】原田 泳幸(はらだ えいこう)
日本マクドナルド会長。1948年長崎県生まれ。東海大学工学部を卒業後、日本NCR、横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェを経て、1990年にアップルコンピュータジャパンに入社。1997年に同社代表取締役社長兼米本社副社長に就任し、iMacなどの商品を日本でヒットさせる。2004年2月に日本マクドナルドに入社し、7年連続マイナス成長だった同社をV字回復に導く。
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