カルチャー
2014年3月11日
震源ではなにが起こっているのか?
『東北地方太平洋沖地震は"予知"できなかったのか?』より
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未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震。そもそも地震や津波はどのようにして起こるのか。そのメカニズムを『東北地方太平洋沖地震は“予知”できなかったのか?』の著者・佃為成が解説します。


地震が起こる仕組み


出典:『東北地方太平洋沖地震は"予知"できなかったのか?』 ※クリックすると拡大

 地震波の最初の波(P波)の押し波、引き波のパターンの研究からわかったことですが、岩盤の中で互いに反対の向きに回る2つの回転力(モーメント)が働いて地震が起こります。

 モーメント(moment)はそもそも「一瞬」という意味です。「ちょっと待って!」を英語で言うとWait a moment!です。この一瞬の意味が「一撃」という意味にも使われるようになりました。てこの原理で、腕の長さと力をかけたものが回転力の強さを表しますが、このぐいっと回転させるときの「一撃」がモーメントです。

 地震は地下で2つのモーメント(一撃)がぐいっと作動して発生するのです。

 この回転力を実際につくりだすものは岩盤内にできる亀裂です。岩盤に平面の切れ目を入れ、急にずらしたときにその力が発生します。

 この切れ目を「断層」と呼びますが、震源に生じた断層を「震源断層」と呼びます。地震とは、簡単にいえば震源断層をつくる現象です。

 岩盤の中に急激に断層ができて地震波が発生するのが地震です。次に、震源断層が生成されるわけを考えてみましょう。

 岩盤を押しつぶそうと、ある方向から強い力がかかっているとしましょう。岩盤は縮みます。そして内部では、岩の組織が手に手を取り合って結合しながら形を維持しようと反発する姿勢を示します。この反発力を応力(英語でstress)と呼んでいます。地下の岩盤は、外部からの力と内部のこういった反発力が均衡を保ちつつ、緊張状態に置かれているのです。この緊張を緩和するにはどうしたらよいでしょうか?

 地震が発生しようとしている岩盤領域に注目します。その周りも岩盤ですが、少しずつ動いているとします。ある方向には、特にその外圧が大きくなります。

 縮んでいる岩盤は応力で対抗するので、緊張状態に発展しますが、強く押してくる方向に対して岩盤に斜めの切れ目を入れます。そして切れ目の面に沿ってずらしてみます。すると、岩盤の端から端までの長さは短くなります。岩盤内部の組織が縮む代わりに、切れ目に沿ってすべることによって、全体の岩盤の長さを短くしているわけです。

 「自然」はこのように岩盤の中の緊張を緩めようとして岩盤内のずれを起こしているのです。すべる面として斜めの面が選ばれるのは、その面に対してもっとも大きなずれの力(応力)が生ずるからです。

 岩盤は圧縮によって縮むだけでなく、ある方向に引っ張られて伸びる場合もあります。この場合は、同じような斜めの切れ目の面を長さが伸びる方向にずらせばよいのです(縮む方向とは逆の方向)。

 地下深部のように、かぶっている圧力が高く隙間をつくれない場所で、断層をこしらえて自分で縮んだり伸びたりするうまい仕組みができているのです。「のれんに腕押し」のように手応えをなくすことによって外圧をしのぐのと同じことです。

 急激に震源断層ができることが地震の発生であり、2つのつり合った偶力(カップル)が地震動を発生させます。偶力は回転する力です。その威力はモーメントで表せます。モーメントというのは、てこの原理や滑車の力のつり合いの勉強で習った、<腕の長さ×力>です。

 地震はこのモーメントが大きいほど、地震波が強く、影響範囲も広くなり、はきだすエネルギーも大きくなります。このエネルギーのもとは岩盤にたくわえられた歪みエネルギーですが、地震のモーメントはその量にだいたい比例しています。このモーメントは力の強さを表すと同時にエネルギーに比例する量をも表しています。


東北地方太平洋沖地震は"予知"できなかったのか?
地震予知戦略や地震発生確率の考え方から明らかになる超巨大地震の可能性
佃 為成 著



【著者】佃 為成(つくだためしげ)
1945年生まれ。1969年、東京大学理学部卒。東京大学地震研究所をへて現在は日本女子大学講師。専門は地震活動、地震テクトニクス、地震予知。著書に『大地震の前兆と予知』(朝日新聞社)、『東北地方太平洋沖地震は"予知"できなかったのか?』(SBクリエイティブ)などがある。
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