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「TEDトーク」はプレゼンの生きた教材

　新時代のソーシャルイベントとしていま、世界で人気を誇る「TED」。
　聞き手の心を魅了する「極上のプレゼン」が、いま世界中で注目されている。

　そもそもTEDは、「価値のあるアイデアを世に広める」ことを目的とするアメリカの非営利団体のこと。現在、「TEDトーク」と呼ばれるプレゼン動画を世界中に無料配信して、誰でも視聴できるようになっている。

　スピーカーには世界の著名人が目白押し。たとえば、ジミー・ウェールズ（Wikipediaの共同創設者）、ジェフ・ベゾス（Amazonの経営者）、オリバー・サックス（精神科医）、ビル・クリントン（元米大統領）など、様々な分野で活躍する実業家、政治家、研究者、アーティストなどが名を連ねている。

　一方で「価値あるアイデアを世に広める」ことが目的なので、一般的には無名な人物も数多く選ばれ、すぐれたプレゼンを披露している。

　ちなみに日本では、選りすぐりのTEDトークが『スーパープレゼンテーション』という語学番組（NHK・Eテレ）で字幕付きで視聴できる。

　このようにTEDトークを目にする機会は増え、多くの聞き手（視聴者）の話題を呼んでいるが、なぜこれほどまで注目されているのだろうか。
　ここで簡単にTEDトークの魅力を挙げてみよう。

・綿密に準備されたユーモアとウィットに富む最上級のプレゼンが見られる
・聞き手が純粋に知識や教養を身につけるのに役立つ
・字幕付きの英語教材としても活用できる

　現在1500本近い動画が無料で閲覧可能。世界の一線で活躍する人たちの最上級のプレゼンが閲覧できるとあり、とくにプレゼンテクニックの習得という目的では、これほど生きたお手本はないであろう。

　実際、TEDトークを見ればわかるが、スピーカーのプレゼンに刺激を受け、心を揺さぶられることが多い。
　TEDトークはなぜこれほどまで聞き手の心を揺さぶり、感動させるのだろうか。

　ここでは、TEDトークからプレゼンを成功させる秘訣を学び、実際のプレゼンやスピーチに活かすテクニックを簡単に紹介しよう。

聞き手の心を魅了する6つの要素とは？

　パブリックスピーチの講師として、香港のバンカーからドバイのエグゼグティブまで数千人を指導し、数多くのスピーチコンテスト優勝経験のあるアカッシュ・カリア。
　カリアはすぐれたTEDトークの共通要素を200以上のプレゼンから詳細に分析している。

　まずカリアは、TEDトークの分析の前に、チップ・ハース、ダン・ハースによる成功するプレゼンの秘訣を援用している（『アイデアのちから』日経BP社）。
　これはプレゼンの成功に欠かせない基本なので、簡単にその6つの要素を紹介しよう。

（1）シンプルであること
　広告でもそうだが、メッセージはシンプルで、明確なほうがいい。そのためにシンプルなコアメッセージでまとめる必要がある。
　スピーチが終わった後も聞き手に覚えておいてもらいたいことを1つだけ考えてみよう。それを子どもでも理解できるような言葉で、1つの文章にまとめるのだ。それがシンプルなメッセージになる。

（2）意外性があること
　すぐれたメッセージは、衝撃的で意外性のあるものが多い。
　プレゼンで聞き手の注意を引きつけるには、期待を裏切ることを言うのが一番である。しかし、ウケを狙って、期待を裏切ることになってはいけない。オチを必ずメッセージの一部にすることが大切である。この手法は衝撃的な事実や統計値を伝えるときに使えるだろう。

（3）具体性があること
　『アイデアのちから』（前掲）によれば、すぐれたメッセージは曖昧なものではなく、具体的なものだという。たとえば、「数ヶ月前」ではなく「2013年3月19日」と言うように、細部を具体的に明確に伝えるのがよい。

（4）信頼性が高いこと
　すぐれたメッセージは、信頼性が高くなければならない。
　方法の1つとして、あなたの得意分野について話をすることだ。第三者が言っているという紹介の仕方で信頼を確立するという手法もある。

（5）感情に訴える
　感情に訴える広告やプレゼンは、人々に強い印象を与え、記憶に留まることが多い。ストーリーを用いて、聞き手の感情に訴えるのも方法の1つである。

（6）ストーリー性がある
　聞き手の心を動かすには、やはりストーリーが強力な手段となる。聞き手が耳を傾けずにはいられない内容を選ぼう。

　これらの要素はすぐれたTEDトークに見られる特長であるばかりか、どんなプレゼンやスピーチでも共通して使えるものである。
　プレゼン前の準備として、まず、これらの要素を満たしているかどうかをチェックするとよいだろう。

　では次に、カリアが詳細に分析したすぐれたTEDトークの共通点を紹介しよう。